大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和25(あ)1163 判決

主 文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理 由

弁護人森山邦雄の上告趣意第一、二点について。

裁判がその内容において公平でなければならないことは勿論である。

しかし、憲法三七条にいわゆる「公平な裁判所の裁判」とは、偏頗の惧なき組織

構成を有する裁判所の裁判という意味であり、同条が具体的個々の事件における裁

判の内容の公平なるべきことまでも保障したものでないと解すべきことは当裁判所

大法廷の判例とするところである。論旨はこの判例を変更する必要ある所以を力説

するのであるが、賛同することはできない。要するに、右判例と反対の見地に立つ

て、量刑苛酷に失し公平を欠く第一審判決を維持した原判決に憲法三七条の違反あ

りとなす所論は採用し得ないのである。

同第三点について。

所論は刑訴四〇五条所定の上告適法の理由に該当しない。そして同四一一条は上

告理由を定めたものではなく、唯、同条所定の場合に上告裁判所が職権を発動して

原判決を破棄し得ることを規定したに過ぎない。所論に鑑み職権調査をしても、な

を原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められない。論旨は採用の限

りではない。

被告本人の上告趣意について。

第一審判決の事実認定は、その挙示する証拠に照らし、これを肯認するに難くな

いのである。そしてその認定事実が原判決説示の如く有価証券偽造罪及び詐欺罪を

構成するものであることは明白である。右詐欺罪の不成立を主張する所論は、刑法

二四六条を誤解し独自の見解の下に第一、二審判決の正当な判断を非難するものに

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外ならない。従つて判示被告人の所為はその実行の時既に違法のものたることは勿

論であり、憲法三九条にいわゆる「実行の時適法であつた行為」ということはでき

ない。また本件公訴事実には全然別異な二個の詐欺の事実が包含されていたのであ

り、第一審はその一を有罪とし他の一について無罪の宣告をなしたものであること

は記録上明らかである。そして原判決はその第一審の有罪判決を認容したに過ぎな

いのであるから、同条にいわゆる「既に無罪とされた行為について」刑事上の責任

を問うたものでないことは多言を要しないところである。次に論旨援用にかゝる刑

訴四〇六条及び四一一条の規定は、ともに上告理由を定めたものではなく、しかも

本件は「法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件」にも該当せ

ず、また四一一条により職権を発動して原判決を破棄すべき事案とも認められない。

要するに、論旨は多岐に亘つているけれども、所論違憲の主張はその前提を欠き全

く成立し得ないものであり、その他の所論も畢竟事実審の裁量権に属する事実認定

を非難することに帰着し、すべて、刑訴四〇五条所定の上告適法の理由とならない。

よつて刑訴四〇八条一八一条一項に従い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

昭和二五年一一月二日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 岩 松 三 郎

裁判官 澤 田 竹 治 郎

裁判官 齋 藤 悠 輔

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