大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和25(あ)1560 決定

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人小田原親弘上告趣意について。

第一審裁判所の認定した判示詐欺の事実は、その挙示する証拠を綜合すればこれ

を肯認するに難くないのである。論旨第一点及び第三点の所論は第一審裁判所が採

用しなかつたと認められる証拠にもとずき判示詐欺の事実を否定するに外ならない

のであり、畢竟事案審の裁量に属する証拠の取捨又は事実の認定を非難するに帰着

し刑訴四〇五条所定の上告適法の理由に該当しない。また、第一審裁判所が所論被

告人側の証拠申請を却下したことは論旨(第二点)の指摘するとおりであるが、第

一審公判調書の記載によると、同裁判所ははじめ右証拠申請の採否の決定を保留し、

他の証拠調をなした後もはやこれが取調の要なしと認めるに至つて、これを却下し

たものであることが窺われるのである。そして憲法三七条二項は、裁判所が必要と

認めて喚問した証人に関する規定であつて、裁判所が取調の要なしと認めた証人ま

でもこれを喚問して被告人に審問の機会を与えなければならないことを規定したも

のではない。この見解は当裁判所大法廷の判例が縷々判示したところである。され

ば所論の証拠申請を却下してなされた第一審判決及びこれを認容した原判決に、右

憲法の条項に違反する違法ありということはできない。のみならず控訴裁判所は控

訴趣意書に包含された事項を調査すれば足り、それ以外に渉つて控訴の理由の有無

につき職権調査をしなければならないものではないのである(刑訴三九二条参照)。

そして所論は原審において控訴趣意として主張されず、原審もその点に関し何等判

断をしていないこと記録上明らかであるから、結局刑訴四〇五条所定の上告適法の

理由に該当しない。

よつて刑訴四一四条、三八六条一項三号に従い主文のとおり決定する。

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この決定は裁判官全員の一致した意見である。

昭和二六年五月一〇日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 岩 松 三 郎

裁判官 澤 田 竹 治 郎

裁判官 眞 野 毅

裁判官 齋 藤 悠 輔

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