大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和25(あ)1852 決定

主 文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理 由

弁護人福田力之助の上告趣意について。

論旨は社会制度の欠陥に基因するところが大であり、憲法上の国民の諸権利が保

障されていないことに基く犯罪に対して死刑を科する判決は憲法に違反するものと

前提して、被告人の本件犯行をもつて社会制度の欠陥に基因すること大にしてしか

も国家は被告人に対して何等の保護も与えず、社会保障制度の実施にも努めず、勤

労の権利についても適切な措置がなされていないのにその責任を被告人のみに負わ

せ死刑を科した原判決はその内容が憲法に違反すると主張するのである。しかし、

論旨前段は弁護人独自の見解であつてとるをえないばかりでなく、被告人の本件強

姦致傷殺人の所為は所論のような欠陥に基因するものと認めるに足る何等の事跡を

記録上発見することをえないのであるから、論旨は明らかに、刑訴四〇五条に定め

る上告の理由たる事由にあたらないし、同四一一条を適用すべきものとも認められ

ない。

被告人の上告趣意について。

論旨は要するに、本件殺人の犯意を否認し、犯行の時間、場所、飲酒量及び酩酊

の程度等についての第一審判決の認定判示を非難し、犯行の動機、態様、犯行後の

状況、心境等を縷述し、第一審判決の証拠の取捨、判断乃至原審における証拠調の

範囲、限度等を論難して被告人に対する量刑をもつて惨酷であるというに帰し、明

らかに刑訴四〇五条に定める上告の理由たる事由にあたらないし、第一審判決並に

これを是認した原判決には法令の違反、事実の誤認及び量刑の不当のいずれのかど

も存在しない。されば職権をもつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反するも

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のとは認められないから、本件には刑訴四一一条を適用すべきものではない。

よつて刑訴四一四条、同三八六条一項三号一八一条一項に従い裁判官全員一致の

意見で主文のとおり決定する。

昭和二五年一一月三〇日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 澤 田 竹 治 郎

裁判官 齋 藤 悠 輔

裁判官 岩 松 三 郎

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