最高裁判所第一小法廷 昭和25(れ)1127 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人寺嶋祐一の上告趣意第一点について。
第一審公判調書中の被告人の供述記載内容が第一審における弁護人の勧告による
虚偽の自白であるとの所論主張は、その被告人の供述記載の内容自体に照したやす
く措信することはできない。ことに原判決が証拠として引用している原審証人A、
同Bの供述記載その他原判決挙示の証拠と対照して考察すれば必ずしも虚偽の自白
とは断じ難い。されば、原審がこの点に対する弁護人の証人申請を必要なきものと
認めて却下した上、右公判調書中の被告人の供述記載を真実の自白と認めてこれを
挙示の他の証拠の綜合証拠としても、それは、原審の裁量に任かされているところ
であつて、これを以て原判決には所論のように証拠とすべからざるものを証拠とし
て判示事実を認定した違法があるとはいえない。所論は結局原審の裁量に属する証
拠調の限度、証拠の取捨乃至事実の認定を非難するにとどまるもので上告適法の理
由とならぬ。
同第二点について。
証拠調の範囲限度は原審の裁量権内に属するから、所論弁護人申請の証人を喚問
する必要なしと認めて原審がこれを却下したからといつて原審の措置を違法という
ことはできない。そして憲法三七条二項の規定は当事者から証人申請があつたから
といつて裁判所は不必要と思われる者までもことごとく喚問しなければならないと
いう趣旨ではないと解すべきことは当裁判所の判例(昭和二三年(れ)八八号同年
六月二三日、同年(れ)二三〇号同年七月二九日各大法廷判決参照)の示すとおり
であるから、原審が所論申請の証人を喚問する必要なしとして申請を却下したから
といつて所論憲法の条項に違反するものということはできない。論旨はいずれもそ
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の理由がない。
弁護人寺嶋祐一同久保田美英の上告趣意書補充は上告趣意書提出期間後に提出し
たものであるからこれに対しては説明を与えない。
よつて旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。
この判決は裁判官全員の一致した意見である。
検察官安平政吉関与
昭和二五年一一月一六日
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 澤 田 竹 治 郎
裁判官 齋 藤 悠 輔
裁判官 岩 松 三 郎
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