大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和25(れ)1807 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人設樂敏男の上告趣意について。

論旨は証人Aの証言が実験則上不可能な事実を供述するものであると主張する。

しかし、それは原審の採用しなかつたと認められる被告人の供述その他の証拠に立

脚しての所論であつて、その然らざることはその証言の内容自体に徴して明らかで

ある。また同証人と証人Bの各証言中に所論の如く相互に一致しない部分のあるこ

とは論旨の指摘するとおりであるが、その齟齬する点は判示罪となるべき事実の点

に関するものではなく、論旨も認めているように、本件犯行発覚当時の情況に関す

るものであり、証人Aは被害者Bに被害事実を告知した旨、また証人Bは自ら被害

事実を覚知しれ旨それぞれ供述しているに過ぎないのであつて、右両個の証言中に

かかる主観的齟齬があつてもこれがために直ちにそれらの証言に証拠価値なしとい

うことはできない。元来証言なるものは或る事実に対する証人の主観的認識をその

記憶するところに従つて供述せられるものに外ならないのであるから同一の客観的

出来事に関する各証人の供述と雖も各人の注意力記憶力等の関係から微細の点にい

たるまで一致するものでないことはむしろ通例であつて、それらの各証言の証拠価

値は事実審裁判所が諸厳の事情を斟酌して判断するところに委ねられているのであ

る。されは原審が所論の証言を原判決挙示の他の証拠と相俟つて綜合認定の資料と

したからとて、所論の違法があるということはできない。そして原審認定の判示事

実は原判決挙示の証拠を綜合すればこれを肯認するに難くないのであるから、所論

は結局事実審である原審の裁量権に属する証拠の取捨を非難し延いて事実の認定を

論難するに帰着し上告違法の理由とならない。

よつて旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。

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検察官 福島幸夫関与

昭和二六年五月三一日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 岩 松 三 郎

裁判官 澤 田 竹 治 郎

裁判官 眞 野 毅

裁判官 齋 藤 悠 輔

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