最高裁判所第一小法廷 昭和25(れ)779 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人村松周一郎の上告趣意第一点について。
被告人は昭和二四年一〇月一二日附弁護人B解任届を原審に提出したこと、同日
の原審第一回公判が弁護人の立会なくして開廷審理されたことは所論のとおりであ
る。
しかし、本件は物価統制令三三条に該当し一〇年以下の懲役又は一〇万円以下の
罰金を科せられる案件で旧刑訴三三四条に定める事件にあたらないから、原審が弁
護人の選任ないにもかかわらず、職権で弁護人を附することなく、所論の原審公判
を開廷したからといつて同条に違反するものとはいえない。また、被告人提出のB
弁護人解任届を閲するに、同届には、所論のように経費の理由による旨の記載の他
に、札幌において自ら弁護人を選任する旨の記載があるだけで被告人が貧困その他
の事由で自ら弁護人を選任することができないとして、その選任を原審に請求した
ものとは解せられない。
されば原審が被告人のために弁護人を選任しなかつたことは、刑訴応急措置法四
条の規定に違反するものともいえない。従つて原審の所論公判期日の審問手続には
所論の違法は存しない。論旨は理由がない。
同第二点について。
論旨は最近の我が国各種物資の出廻り情況、本件犯行の動機等を縷述し、結局原
判決の量刑を過重なりと主張するものであつて、事実審たる原裁判所の裁量権の行
使を非難するにとゞまるものであるから、上告適法の理由とならぬ。
同第三点について。
原審が本件に適用した昭和二二年九月三日物価庁告示第五五八号はその後数次に
- 1 -
亘る同庁告示で改正されたが結局昭和二五年四月二〇日同庁告示第三〇六号によつ
て同二四年一〇月二五日同庁告示第八九〇号(動植物油脂等及び人造バターの販売
価格の統制額指定の件)の一部が改正され、その結果右四月二〇日以後本件A油に
ついては統制価格の指定なき状態にあつたことは所論のとおりである。しかし一旦
成立した物価統制令違反罪の処罰が、かかる爾後における告示の廃止により左右さ
れるものではないと解すべきことは当裁判所昭和二三年(れ)第八〇〇号同二五年
一〇月一一日大法廷判決に示すとおりであるから、論旨はとるをえない。
よつて旧刑訴四四六条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
検察官安平政吉関与
昭和二五年一一月一六日
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 澤 田 竹 治 郎
裁判官 齋 藤 悠 輔
裁判官 岩 松 三 郎
- 2 -