最高裁判所第一小法廷 昭和26(あ)1694 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人中村領策の上告趣意について。
憲法三七条一項にいわゆる「公平な裁判所の裁判」とは、偏頗や不公平のおそれ
のない組織と構成をもつた裁判所による裁判を意味するものであつて、個々の事件
につきその内容、実質が具体的に公正妥当なる裁判を指すものでないことは当裁判
所の判例とするところであり(判例集二巻五号五一一頁)、原審裁判所裁判官の構
成に金沢家庭裁判所の判事が加つたこと及び原審裁判所の書記が第一審裁判所の審
理に立合つたことは、裁判所法及び刑訴法の規定に照らし何らの違法なく、従つて
所論憲法三七条違反の主張は前提を欠くものである。なお、論旨は、その他の点に
つき、憲法違反を主張するけれども、その実質はいづれも事実誤認、単なる訴訟法
違反の主張に帰し、また、判例違反をいうけれども、所論判例は「例えば被告人に
前科あるの事実のごとく、証拠の実質が一定の犯罪事実を認定するに適当ならざる
ものは之を判断の資料に供することを得ざるものなること実験の法則に照らし明か
なりとす」というにあり、原審判決は、記録に基き控訴趣意に引用の証拠その他第
一審裁判所において取り調べた証拠を検討した上、犯罪事実を認定するに適当なる
ものとしてこれを判断の資料に供したのであるから、右判例は本件の場合とは前提
を異にし、本件に適切でない。以上の理由により所論はいづれも刑訴四〇五条の上
告理由に当らない。
弁護人奥山八郎、同井上忠己の上告趣意について。
第一点は原判決の訴訟手続の違憲をいうが、仮りに捜索差押許可状に所論のよう
な違法があつたとしてもその一事によつて、所論差押調書そのものが無效となるも
のとはいえないし、また右調書を証拠に供することについては、被告人並びに弁護
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人が同意しているのみならず、原判決判示第一の事実は、右調書の記載を除外した
他の証拠によつてもこれを認定し得るのであるから、原判決の訴訟手続には所論の
ような違法はない。
同第二点は、事実誤認、単なる訴訟法違反、同第三点及び第四点は単なる訴訟法
違反の主張であつて、いづれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。記録を精査し
ても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて同四〇八条により主文のとおり判決する。
この判決は裁判官全員一致の意見である。
昭和二八年三月二六日
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 入 江 俊 郎
裁判官 真 野 毅
裁判官 斎 藤 悠 輔
裁判官 岩 松 三 郎
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