大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和26(れ)1646 判決

主 文

原判決を破棄する。

被告人を懲役十月及び罰金七万円に処する。

本裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

右罰金を完納することができないときは、二百五十円を一日に換算した

期間被告人を労役場に留置する。

原判決判示事実中、被告人が統制額を超過する代金で氏名不詳者から三

回に亘り小麦を買受けた事実(原判決別表小麦買受一覧表第五項乃至第七項記載の

事実)につき、被告人は無罪。

理 由

弁護人白井源喜の上告趣意は、原判決が第一審公判廷の被告人の自白のみで、補

強証拠なくして公訴事実全部を認定したのは最高裁判所の判例違反であると主張す

るのである。よつて記録を調査すると、原判決は、被告人が小麦または小麦粉を統

制額を超過する代金をもつて売買した判示数個の事実を認定する証拠として、被告

人の第一審公判廷における供述、A、B、C、D、Eの各売渡始末書記載Fの陳述

書(写)G、Hの各買受始末書記載を挙げているが、右認定事実中主文第五項掲記

の部分については、被告人の第一審公判廷における自白以外にこれを補強するに足

る証拠は示されていないことが認められる(所論の陳述書写は補強証拠となし得る

ものと認められ従つて、右以外の判示事実は自白と補強証拠と相侯つてその認定を

肯認することができる)。されば原判決は右の部分につき被告人の原審公判廷外に

おける自白のみによつて有罪を認定したものであつて、当裁判所大法廷判例(判例

集四巻七号一二九八頁以下及び同三巻四号四四五頁以下)に違反し原判決は刑訴施

行法第三条の二、刑訴四〇五条二号、四一〇条により破棄を免れない。

よつて刑訴施行法第二条、旧刑訴第四四八条により更に判決するに、主文第五項

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掲記の事実についてはその犯罪の証明なきに帰するものというべきであるから、旧

刑訴第四五五条、第三六二条に従い被告人に対し無罪を言渡すべきものとし、その

余の原判決判示事実につき法令を適用すると、右事実は物価統制令第三条、第四条、

第三三条、昭和二一年物価庁告示第一八三号、同二二年同告示第七〇九号、同年同

告示第一一〇九号、同二一年同告示第一八五号、同二二年同告示第三五八号、同年

同告示第九六二号に各該当するところ同法三六条により懲役及び罰金を併科し(裁

判時において適用ある罰金等臨時措置法第二条は、刑法第六条第一〇条により適用

しない)、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条、第一〇条、

第四八条により併合罪の加重をなした刑期並びに金額の範囲内において主文第二項

の刑を定め、なお懲役刑の執行猶予につき同法第二五条、罰金の換刑処分につき同

法第一八条に則りそれぞれ主文第三項第四項のとおり定める。

よつて裁判官斎藤悠輔の反対意見(判例集三巻四号四四七頁以下参照)を除く外

全員一致の意見で主文のとおり判決する。

本件公判には検察官川井寛次郎が出席した。

昭和二九年二月二五日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 岩 松 三 郎

裁判官 真 野 毅

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 入 江 俊 郎

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