最高裁判所第一小法廷 昭和26(れ)2339 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人岡田実五郎の上告趣意第一点について。
所論は、判例違反をいう点もあるが、所論引用の判例は、公務員が退職又は転職
後の収賄に関する判例であつて、本件のように世田谷税務署B課C係より京橋税務
署D課E係に転勤した案件には適切でない。その余は、単なる法令違反の主張であ
つて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
同第二点について。
しかし、被告人が贈賄者Aから受領した賄賂そのものを贈賄者に返還した事実は、
原判決の認めなかつたところであり、従つて、所論判例違反の主張はその前提を欠
き採用できないし、その余は、単なる訴訟法違反の主張であつて、刑訴四〇五条の
上告理由に当らない。
同第三点について。
所論規則八条は、憲法七七条に定める最高裁判所の権限内に属しかつ、直接には
刑訴施行法一三条に基く適憲合法な規則であることは、当裁判所屡次の判例の趣旨
とするところである。(昭和二五年一〇月二五日当裁判所大法廷判決判例集四巻一
〇号二一五一頁以下、昭和二六年一二月二八日当裁判所第二小法廷判決判例集五巻
一三号二六八五頁以下、昭和二七年七月一日当裁判所第三小法廷判決判例集六巻七
号八六九頁以下参照。)。されば、所論は、採用できない。
同第四点について。
刑訴応急措置法一二条二項の規定は、被告人を除いた証人その他の者の供述を録
取した書類については、憲法三七条二項の要請に基き、同措置法一二条一項の訴訟
法上の権利保障を与え、被告人の供述を録取した書類については、憲法三八条と同
- 1 -
一趣旨の同措置法一〇条の訴訟法上の権利保障を与えた以上は、最早旧刑訴三四三
条の規定は不必要なのであるからこれを適用しないとしたのである。されば、右措
置法一二条二項の規定を設けたからといつて、所論のような訴訟法上の既得権なる
ものを奪う筋合となる道理がない。されば、所論は、その前提を欠き採用できない。
弁護人竹村川二の上告趣意は、単なる訴訟法違反の主張であつて、刑訴四〇五条
の上告理由に当らない。
そして、記録を調べても、本件につき同四一一条を適用すべきものとは認められ
ない。
よつて、刑訴施行法三条の二、刑訴四〇八条に従い、裁判官全員一致の意見で、
主文のとおり判決する。
昭和二九年一月二一日
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 岩 松 三 郎
裁判官 真 野 毅
裁判官 斎 藤 悠 輔
- 2 -