大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和26(れ)440 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人坂野英雄の上告趣意第一点について。

しかし、所論の第一審第三回公判調書中の証人A(被害者)の供述記載は、これ

を味読すると、同証人が判示飲食店Bにいた被告人に更に清酒二升を提供したのは、

同証人が被告人に酒食を提供しないと被告人は同証人の身体に危害を加えるかも知

れないような気勢をその前日同証人に対して示したので、当日もなお同証人が被告

人を畏怖していたために外ならぬと理解できるのである。従つて原判決もこの趣旨

を言い現わしているものと解することができる。しかのみならず原審は判示二回の

清酒二升の各喝取行為を併合罪としないで単純一罪として処断しているところから

見ても所論の原判示事実の認定は原判決挙示の各証拠に照してこれを肯認するに足

りその間反経験則の違法もないというべきである。されば原判決には所論の違法は

なく、論旨は結局事実審たる原裁判所の裁量に属する証拠の取捨判断乃至事実認定

を非難するに帰し上告適法の理由となしえない。

同第二点について。

しかし原判決は「……同年一一月二〇日頃乾児数名を連れて右C方に行き……」

と認定判示している。そして証人Cの所論に摘示する供述記載には「……玄関には

Dと外二名で外には四、五名居たと思ひます」とあるから、原判決が同記載中「玄

関にはDと外二名で」の部分によつて被告人Dが乾児数名を連れと認定判示したと

しても原判決には証拠によらずして事案を認定した違法ありとはいえない。しかの

みならず、同証人は更に「……玄関の外は硝子戸を隔てて四、五人の人影を認めま

した、その人影はDが帰えると一緒に見えなくなりました」と供述していることが

記録上認められるのであるから、同証人の「外には四、五名居たと思ひます」の供

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述記載をとらえて、同証人の単なる推測の事実の供述記載と独断前提して、原判示

事実の認定を適法な証拠によらないで犯罪事実の一部を認定した違法ありとの論旨

はとるをえない。論旨は結局原判決挙示の証拠の一部をとらえて独自の解釈を加え、

原判決の採用しない証拠を引用して原審の適法にした事案認定を非難するに帰し上

告適法の理由とならぬ。

よつて旧刑訴四四六条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

検察官 竹原精太郎関与

昭和二六年六月七日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 澤 田 竹 治 郎

裁判官 眞 野 毅

裁判官 齋 藤 悠 輔

裁判官 岩 松 三 郎

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