大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和26(オ)512 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

原判決は人の住所を定義付ける民法第二一条にいわゆる生活の本拠とは、その人

の生活関係一般における中心をなす場所であり、その住所の成立するがためには単

に本人がその場所を生活関係の中心とするいわゆる主観的意思の外その意思の実現

と見られる客観的事実の伴うことを必要とするものであつて自作農創設特別措置法

(以下自創法という)第三条第一項にいわゆる住所も右民法上の住所の概念と別異

のものではないとの見解の下にその挙示する証拠によつて認定したそれぞれの事実

を、綜合して被上告人の住所は判示場所に在つたものと認定したものであることは

原判文上明らかであり、右原審の住所に関する見解はこれを相当と認め、且前示証

拠に徴すれば右認定は是認できないわけのものでもない。上告人は自創法にいわゆ

る住所の概念は民法的にのみ解釈すべきでなく自創法のもつ公法的性格及び使命よ

りして合目的的に解釈すべく此の見地よりすれば、自創法にいう住所とは本人の主

観的意思に拘泥せず客観的事実を基礎とし本人がその場所に常住する具体的事実を

必要とするものであつてこの観念は夙に大審院判例(大正九年七月二三日及び昭和

二年五月四日言渡)の是認するところであるとの見解の下に前示原判決認定の各事

実に反論を加えつつ判示場所には被上告人常住の事実がなかつたものと主張するが、

原判決の住所に関する見解はその表現こそ異なれ結局所論とその軌を同じうしまた

所論大審院判例とも背馳するものではない。

畢竟所論は原審の裁量に属する事実認定を非難するに過ぎないものである。故に

論旨はすべて、「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(

昭和二五年五月四日法律一三八号)一号ないし三号のいずれにも該当せず、又同法

- 1 -

にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 下 飯 坂 潤 夫

裁判官 真 野 毅

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 入 江 俊 郎

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!