大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和26(オ)948 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人弁護士鍛治利一、同松田登米一の上告理由第一点について。

民法七二二条二項は、被害者に過失があつたときは、裁判所は、損害賠償の額を

定めるにつき、これを斟酌することを得る旨規定して、その斟酌を裁判所の裁量に

委ねているのである。されば、所論は、原審の裁量非難に帰し、上告適法の理由と

なし難いばかりでなく、原判決が所論摘示のごとく説示して、被害者の過失を損害

賠償額の算定につき斟酌しないとしたことは正当であつて、その裁量につき違法の

点も認められない。それ故、所論は採用し難い。

同第二点について。

舊刑訴五七二条は、私訴については民事訴訟法中同条所定の事項に関する規定だ

け準用するものと規定してあつたから、民訴一編、四章、四節裁判に関する一九六

条所定の仮執行の宣言に関する規定は、私訴については準用されなかつたものと解

するを相当とする。従つて、本件第一審の私訴判決において仮執行の宣言をしたの

は失当であるといわなければならない。しかし、原判決も説示しているごとく、原

審の最終口頭弁論期日である昭和二六年六月五日当時においては、刑訴施行法一二

条により私訴については民事訴訟法を適用すべきものであるから、原判決当時には

右民訴一九六条の規定は、第一審判決の認容した金員支払の私訴請求についても適

用あるものというべく、従つて、結局仮執行の宣言を非難する所論は、失当たるを

免れないものといわなければならない。そして右刑訴施行法一二条の規定は、何人

に對しても等しく適用される規定であるから、所論憲法一四条違反の主張は、その

前提を欠き採用できない。

- 1 -

同第三点について。

論旨は、結局事実誤認並びにこれを前提とする法令違反の主張に帰し、上告適法

の理由となし難い。

よつて刑訴施行法一二条民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一

致で主文のとおり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 岩 松 三 郎

裁判官 眞 野 毅

裁判官 齋 藤 悠 輔

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!