大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和28(あ)59 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人沢辺金三郎の上告趣意第一点について。

所論は、判例違反をいうが、原判決は、本件接客婦A外一六名は、業主の経営す

る喫茶店で女給として客を接待した上、任意その客を接待婦各自の所属待合につれ

込んで売淫し客からその料金の支払を受けることを主眼とし、また、本件喫茶店兼

待合営業を営むB外九名が待合として接客婦が売淫する場所を準備して使用させる

外一連の経営施設として買淫客を誘引すべき場所である喫茶店を設置するとともに

接客婦に宿舎を提供し、客から受領した売淫料のうち一定の金員を席料名義の下に

支払わせて利得すると同時に右定額を超える分に限り接客婦に対する報酬としてそ

の任意処分に委ねることを双方合意した旨判示したに止り、所論のごとくいわゆる

待合、喫茶店業者は売淫する場所を提供して売淫料の内一定金額を収得するもので

あり、また、いわゆる接客婦は、売淫をその業態とするものであるとは判示してい

ない。されば、所論判例は本件に適切でないばかりでなく、原判決は、何等これと

相反する判断をしていない。

同第二点について。

論旨は、違憲をいうが、原判決が、所論のごとく、警察官庁において、本件業者

並びに接客婦が公認又は黙認されて公然とその業務を営んでいる事実を認めながら、

被告人の業務並びに社会的地位関係においてのみ所論のごとき差別的な事実認定の

取扱をした事実を認めることができない。されば、所論違憲の主張は、その前提を

欠き、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

同第三点について。

所論は、違憲をいうが、その実質は、単なる法令違反の主張であつて、刑訴四〇

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五条の上告理由に当らない。そして、職業安定法五条にいわゆる「雇用関係」とは、

必ずしも、厳格に民法六二三条の意義に解すべきものではなく、広く社会通念上被

用者が有形、無形の経済的利益を得て一定の条件の下に使用者に対し肉体的、精神

的労務を供給する関係にあれば足りるものと解するを相当とすることは、当法廷の

判例とするところである(判例集八巻三号二四〇頁以下参照)。されば、原判決が、

控訴趣意第二点並びに第一点について、判示のごとく認定し、結局本件業主と本件

接客婦との間の法律関係は接客婦の業務行為の性質に基因する特殊条件を備えた一

種の職業安定法五条にいわゆる雇用関係に外ならないとしたのは正当である。

同第四点について。

所論は、違憲をいうが、前点について述べたとおり、被告人の行為は、職業安定

法五条に該当するものであるから、同条に該当しないことを前提とする所論一の主

張は、その前提を欠き、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また、所論二は、接

客婦の職業選択の自由に関するものであるが、原判決は、接客婦の所為を処罰した

ものでないから、これまた、その前提を欠き、同条の上告理由に当らない。(なお、

職業安定法三二条は憲法一三条、二二条に違反しないとの昭和二五年六月二一日大

法廷判決判例集四巻六号一〇四九頁以下参照)。

よつて、刑訴四〇八条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

昭和三一年一二月二七日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 下 飯 坂 潤 夫

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