大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和29(あ)4 判決

主 文

原判決中被告人Aに関する部分を破棄する。

被告人Aを懲役八月に処する。

右裁判確定の日より二年間右刑の執行を猶予する。

第一審における訴訟費用は被告人Aにおいて相被告人Bと連帯して負担

せよ。

被告人Bの本件上告を棄却する。

理 由

被告人両名の弁護人海野普吉、同位田亮次の提出した上告趣意第一点、第三点は

事実誤認、同第四点は量刑不当の主張であつて、いずれも刑訴四〇五条の上告理由

に当らない。同第二点は違憲をいうが、所論公職選挙法二五二条一項は、一定の公

職選挙法違反の罪を犯した者に対し、法律上当然効果を発生する規定で、原審は、

これを適用していないから、所論は原判決に対する攻撃とは認め難く、上告理由と

しては不適法であるばかりでなく、同条項が憲法一四条、四四条に違反するもので

ないことは当裁判所の判例とするところであるから (昭和二九年(あ)四三九号、

同三〇年二月九日大法廷判決)、所論は採用できない。

被告人両名の弁護人池田克、同小川保男、同榊原孝の提出した上告趣意第一点は

違憲をいうが、その実質は単なる訴訟手続違反の主張に帰し、同第三点は事実誤認、

同第四点は量刑不当の主張であつて、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

同第二点は違憲をいうが、その論旨の採用すべからざることは、弁護人海野普吉、

同位田亮次の上告趣意第二点について説示したとおりである。

被告人両名の弁護人小野清一郎の提出した上告趣意第一点は違憲をいうが、その

理由のないことは、弁護人海野普吉、同位田亮次の上告趣意第二点について説示し

たとおりである。同第二点は違憲をいう点もあるが、原審においては公開の公判廷

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において刑訴三九三条により事実の取調を行い、被告人等の本件公訴事実に関する

事項について証人の尋問をなしたのみならず、被告人Aの尋問をも行い、更に検察

官及び弁護人双方よりそれぞれ提出せられた書証についても被告人の同意を得て適

法な証拠調をなした上、第一審判決に事実誤認ありとして同判決を破棄し、且つ訴

訟記録並びに第一審及び原審において取り調べた証拠によつて、直ちに判決するこ

とができるものと認めて刑訴四〇〇条但書に依り自判したものであることが明らか

であり、ただその判決書における証拠説示として第一審における証拠のみを挙げた

に過ぎないものと認められるから、所論違憲の主張は結局前提を欠くものであり、

その他所論のような訴訟法違反も認められない。同第三点第四点は判例違反をいう

が、引用の判例はいずれも本件に適切でなく(原審は、被告人Aが被告人Bに対し、

はじめ三〇万円を渡し、後更に犯意を新たにして二〇万円を渡した事実を認めてい

るにすぎず、最初から五〇万円を供与する約束ないし了解があつて、ただその五〇

万円を二回にわけて交付したものとの事実を認定しているわけではない。)、同第

五点は量刑不当の主張であつて、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

被告人A、同Bの各上告趣意は、いずれも事実誤認の主張を出でないものであつ

て、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

次に職権をもつて本件訴訟記録並びに事実審において取り調べた証拠により調査

するに、被告人Aの本件犯行事実に関する原審の認定は当審においても是認できる

のであるが、しかし、被告人Aは、本件二回の合計五〇万円を相被告人Bに対し専

ら自己のためのみの投票取り纏めの選挙運動費用、買収費及び報酬等として供与し

たものではなく、C連盟(原審が証拠として採用した被告人Aの昭和二七年一〇月

二二日の検察官に対する供述調書によれば同連盟は、団体等規正令に基く政治団体

であり、本件昭和二七年一〇月の衆議院議員総選挙には岩手県第一区において被告

人Aを、同第二区においてはDを候補者として推薦することを決議していたもので

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あることが認められる。)の運動費用に主として充てるため支出したものであるこ

と、右五〇万円の処分は相被告人Bに一任され同人の一存で原判示のごとく供与し

現にその一部は開拓者関係の家計費等に使用されたこと、被告人Aの認識が原判示

のごとき程度のいわゆる未必的犯意に属するものであつたことその他被告人の経歴

等一切の情状を綜合すると原判決の量刑は不当であつて、刑訴四一一条二号を適用

して原判決を破棄するを相当とする。

よつて、被告人Bに関しては同四一一条を適用すべさきのとは認められないから、

同人の上告はこれを棄却し、被告人Aに関しては、原判決を破棄し、同四一三条但

書により更に判決することとし、原判決の認定した事実に法律を適用すると被告人

Aの原判示所為は各公職選挙法第二二一条一項一号に該当するところ、以上は刑法

四五条前段の併合罪であるから、いずれも所定刑中懲役刑を選択の上、同法第四七

条、十条により犯情の重いと認められる判示第一の一の供与罪の刑に併合罪の加重

を施した刑期範囲内で、同被告人を懲役八月に処し、情状刑の執行を猶予するを相

当と認め刑法二五条により本裁判確定の日より二年間右刑の執行を猶予することと

し、第一審における訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項、一八二条により被告人A

において相被告人Bと連帯して負担すべきものとする。

よつて、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

検察官大場十郎公判に出席。

昭和三〇年五月一二日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 真 野 毅

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 岩 松 三 郎

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