大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和29(オ)7 判決

主 文

原判決を破棄する。

本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理 由

上告代理人弁護士大石力の上告理由について。

原判決はその理由の冒頭において、「控訴人(上告人)はその所有に係る静岡県

磐田郡a町bc番地のd宅地一七九坪一合一勺の地上に木造瓦葺平家建住家一棟建

坪一五坪を所有していたが、昭和二一年一月三〇日右建物をDに売渡すと同時にD

は控訴人(上告人)に対し昭和二五年一二月三一日までに右建物を取払い他の場所

に運搬すること、及び右取払期日までに右建物の敷地三〇坪の賃料として一箇月一

坪につき金一円二〇銭宛を支払うことを約したこと、その後被控訴人(被上告人)

は昭和二三年春頃Dから右建物を買受けるとともに右敷地の賃貸借関係をも承継し

た」との各事実を当事者間に争ない事実として確定していることは判文上明らかで

あり、そして右事実によれば、右売買契約はDが上告人に対し、昭和二五年一二月

三一までに右建物を取り払いこれを他の場所に運搬することがその前提条件となつ

ていたこと、上告人は右取払期日までの短期間だけ本件土地を賃貸したものである

ことが窺い知り得らるるのである。しからば右敷地の賃貸借は借地法九条にいわゆ

る一時使用のための借地権を設定したこと明らかな場合に該当するものといわなけ

ればならない。しかるに原判決はその理由後段において「控訴人(上告人)とD間

の土地貸借が一時使用のため設定されたものであることは、甲第一号証の記載、及

び原審並に当審証人Eの供述だけでは到底これを認めるに足らないし、(中略)他

にこの事実を認めしめるに足る資料はない。却つて、右の証拠によれば本件土地の

賃貸借は、木造建築の住宅用建物の所有を目的とするものであつて、普通の建物所

有のための賃貸借と認めるのが相当である」と認定しているのであつて(右認定は

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前示書証人証の趣旨に反してなされた疑なきにしもあらずである)、右は明らかに

前段の理由と矛盾撞着し、理由の齟齬を来しているものと云わざるを得ない。しか

して、右賃貸借が一時使用のためのものであることが確定し得るものとすれば、本

件調停は、その内容が右賃貸借の態様そのものを決定したものでない限り民法九五

条に従い錯誤によつて無効となるやも測り難いのであり、しかく判断された場合に

は原判決の主文に直ちに影響すべきが故に、本件については更に原審において審理

をつくさしむるの要あり、論旨は結局理由あるに帰し、原判決は破棄を免れない。

よつて、民訴四〇七条第一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決す

る。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 下 飯 坂 潤 夫

裁判官 真 野 毅

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 入 江 俊 郎

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