大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和30(オ)212 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

所論は、上告人Aが本件手形を訴外D物産株式会社に交付したのは、同人が同会

社において右手形を見せ手形として使用するものと誤信させられた結果、錯誤によ

りなしたものであつて、もとより同会社において本件手形を裏書譲渡したり又は転

々流通させたりする目的で交付したものではないから、本件手形振出行為は存在し

ないものであつて、上告人には手形上の責任はないと主張するのである。

しかし所論のごとき事情は、本件手形の振出行為の縁由の錯誤たるに止まり、振

出行為自体の錯誤とは認められず、従つて右のごとき事情は悪意の手形取得者に対

する人的抗弁事由として主張するは格別本件手形の振出行為自体を無効ならしめる

ものと解することはできない。この点に関する原審の判示は正当であつて、所論は

採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 真 野 毅

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 岩 松 三 郎

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