最高裁判所第一小法廷 昭和30(オ)684 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人弁護士岸達也の上告理由第一点について。
原判決は第一審証人Dの証言により所論事実を認定したものであつて、その措辞
いささか明白を欠くが、要するに所論三千円の提供の為されたのは所論昭和二六年
一月一五日ではなくて、所論催告に定められた猶予期間の最後の日である同二五年
一二月九日であること、及び右金員は上告人の代理人であるD弁護士の事務所にあ
つた人物に渡され、被上告人が債務者として為すべき提供はこれを為し了つたこと
を認定した趣旨であると認めるのを相当とする。従つて、原判決には所論の判断を
示さぬ失当ありというをえない。なお、原判決は右証人Dの証言の一部によつて所
論事実を肯認し、その一部を採用しなかつたものであることは原判決所論の部分を
熟読すれば容易に首肯し得べきであつて、それを所論のように理解しなければなら
ないものではない。それ故、原判決には所論の違法ありというをえない。
同第二点について。
しかし乍ら、原判決は所論甲第三号証の文言に反する特別な解釈をとつているの
ではなく、ただその内容を採用しないだけのことである。従つて、所論判例違反の
主張はその前提を欠き、採るを得ない。
同第三点について。
所論期間(四三ケ月一八日)内における月二二円の割合による賃料合計額が九五
〇円余であることは算数上明らかであつて、これを八六〇円とする所論判示が誤り
であることは所論のとおりであるが、原審は右数額の延滞賃料につき三〇〇〇円の
提供があつたことを確定した上、被上告人に延滞の責なしとしたのであるから、右
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の違算は結論において判決に影響を及ぼすかきんというをえない。また、所論の場
合一ケ月の賃料を二二円であると判断したからといつて社会通念に背き実験則に反
するものともいえない。故に、論旨は採用できない。
同第四点について。
所論昭和二九年一一月一三日附準備書面に基づく陳述が原審でなされた形跡は記
録上認められないから、これを前程とする所論は採用できない。また、所論証人D
の証言は原判決に徴すれば判断の資料に供せられているのであるから、原判文に所
論の遺脱があるからといつて、原判決破棄の理由とはならない。
その他の論旨前段の所論は原判決に影響を及ぼすべき法令違反の主張と為すに足
りない。なお、論旨後段の所論、すなわち所論の主張を撤回したことがないとの弁
解は昭和二九年一一月一三日の原審口頭弁論調書に照らし当審の是認できないとこ
ろである。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 下 飯 坂 潤 夫
裁判官 真 野 毅
裁判官 斎 藤 悠 輔
裁判官 入 江 俊 郎
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