大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和30(オ)822 判決

主 文

原判決中附帯上告人の附帯被上告人に対する損害賠償の請求を棄却した

部分を破棄し、同部分を東京高等裁判所に差し戻す。

理 由

附帯上告代理人弁護士小林澄男の上告理由について。

原判決が、附帯被上告人が本件建物を占有することによつて附帯上告人に被らし

めている損害を賠償すべき義務あること、その損害は特別の事情の認められない本

件では賃料相当額の損失と認めるべきである旨及び本件建物については地代家賃統

制令の適用がないことを判示したこと、並びに、昭和一九年一〇月一〇日附帯上告

人はD配給統制組合に対し本件建物を賃料一ヶ月三〇〇円で賃貸したことを認定し

たことは所論のとおりである。そしてまた、原判決が、甲第九及び第一〇号証によ

つては適正賃料の額を認定することができず他にこの額を認定すべき証拠がなくそ

の外にも被控訴人の損害を算定できる資料はない旨判示しただけで、他に特別な事

情を判示することなくして附帯上告人の請求全部を排斥したことも所論のとおりで

ある。しかるに、原審の認定したように昭和一九年一〇月本件建物につき賃料一ヶ

月三〇〇円の定めで賃貸借が成立したことがあるとすれば、反対の事情の認むべき

ものなき限り右賃料は本件建物に対する当時における相当賃料額であつたと認めら

れるのであり、しかも爾来賃料が高騰すればとて値下りの傾向にない経済事情にあ

ることは顕著な事実であるから、原判決が、附帯被上告人において附帯上告人に対

し地代家賃統制令所定以上の相当賃料額による損害を支払うべき義務ありとする以

上、少くとも一ヶ月三〇〇円の割合による損害金の支払を命ずべきであるに拘わら

ず、前説示のとおり、特別の事由あることを判示しないで附帯上告人の請求全部を

排斥したのは失当であり、原判決には、理由不備の違法があつて破棄を免れないも

のといわなければならない。論旨は理由がある。

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よつて、民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 真 野 毅

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官岩松三郎は退官につき署名押印することができない。

裁判長裁判官 斎 藤 悠 輔

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