最高裁判所第一小法廷 昭和30(オ)972 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告理由(一)(二)について。
原判決は、昭和二六年一月一一日本件当事者間に原判示のごとき代物弁済および
明渡の契約を締結したこと、竝びに、期限までに一部弁済があつても債権額の十分
の八に達しない限り代物弁済契約の効力に影響を及ぼさない特約であること、およ
び、原判示(イ)の入金の事実を認定したことは所論のとおりであるが、所論(ロ)
の金額については期限後の取引分に対する弁済である旨認定しており、その認定は、
挙示の証拠で肯認できる。されば、原判決には所論の違法は認められない。
同(三)について。
原判決の認定した事実関係ことに本件土地建物は契約当時上告人主張のごとく五
百万円以上の価格があつたのではなく百四拾万円程度のものであつたこと、本件契
約当時被控訴人(被上告人、原告)が控訴人(上告人、被告)の無知又は窮迫に乗
じて暴利をはかつたというような形跡はこれを徴するに足りる資料がなく、弁論の
全趣旨によれば控訴人は約定の期限までには容易に弁済し得べき目論見を持つてい
たことが窺われるという事情の下においては、原判決が本件代物弁済契約を以て公
序良俗に反する無効の契約であるといえないとしたのは正当である。論旨は、原判
示に副わない事実関係をも前提とする独自の見解であつて、採るを得ない。
同(四)について。
論旨(一)(二)について述べたとおり八割の特約があつたことは所論のとおり
であるが、本件においては上告人は総額六三万六八三二円余の債務中期限までに僅
かに一〇万一〇〇〇円を支払つたに過ぎないのであるから、その残債務により本件
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不動産につき代物弁済を認めても不当であるとはいえないし、その他右のごとき特
約があつたからといつて単にそれだけのことで本件代物弁済契約をもつて公序良俗
に反するものともいえない。それ故、論旨は採ることができない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 斎 藤 悠 輔
裁判官 真 野 毅
裁判官 入 江 俊 郎
裁判官 下 飯 坂 潤 夫
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