最高裁判所第一小法廷 昭和30(オ)989 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人弁護士奥野久之の上告理由第一、二点について。
原判決は挙示の証拠により認定した事実に基き上告人が本件家屋に第三者を同居
させたのは賃貸人に無断下転貸したものであり、且つその転貸がその認定のような
事情の下で行われた以上は賃貸人の信頼を裏切る背信的行為であつて従つて、右転
貸を理由とする判示解除の通知は信義則に反するものとは云い難く、また右認定以
上の事情の認められない限りは、右解除の通知が権利濫用と認めることもできない
と云つているのであつて、右挙示の証拠に照合すれば右事実認定は首肯でき、その
認定の過程に所論の違法あるを見出し難く、また右認定事実に基く前示判判もすべ
て正当と認められ、これを以て所論法令に違反したものと云うを得ない。所論はひ
つきよう原判決の認定と相容れない事実を主張して原審の専権に属する事実認定を
非難するか、あるいは独自の見地よりする法律論を展開するものでしかなく、採る
を得ない。
同第三点について。
案ずるに、B1、D、E、B2の四名は本件家屋の共有者であり、且つ上告人A
に対し本件家屋の共同の賃貸人であるとの主張の下に、B2を除く右三名は昭和二
八年五月二三日上告人に対しその明渡を求むべく本訴第一審裁判所に訴を提起し、
その理由として上告人は右賃貸人らに無断で転貸したとの理由を以て賃貸借契約を
解除する、右解除の意思表示は訴状を以てすると主張したものであること、そして
右解除の意思表示は賃貸人全員からした趣旨であること、従つて右B2は右訴にお
ける原告とはなつていないが、右解除の意思表示に関しては右原告ら三名において
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B2を代理してなす趣旨であること等の事実は右訴状の記載によつてこれを看取す
るに難くないところである。
しかして、原判決引用の第一審判決は右訴状の送達により昭和二八年六月二五日
に上告人Aに対する無断転貸を理由とする契約解除の表意がなされたものと判示し
ているのであるから、ひつきよう本件家屋の共同賃貸人全員による契約解除の意思
表示が前記日時に上告人に対してなされた趣旨を認定しているものと解するを相当
とする。してみれば無断転貸を理由とする賃貸借契約解除の意思表示が民法五四四
条一項にいわゆる契約の解除に該当するや否やの所論法律点はこれを審究するまで
もなく、原判決が有効と判断した所論契約の解除については所論のかきんがないこ
とに帰するものと云わざるを得ない。されば所論は理由なく、採用できない。
よつて、民訴三九六条、三八四条一項、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一
致で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 下 飯 坂 潤 夫
裁判官 斎 藤 悠 輔
裁判官 入 江 俊 郎
裁判官 高 木 常 七
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