大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和31(オ)216 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人弁護士金原政太郎の上告理由第一点の一、二について。

原判決の理由は措辞明確でないが、要するに、本件建物は上告人の所有であつた

が、その夫D外二名が判示遊戯場経営の為その資金に充つべく、訴外Eから金五〇

万円を借入れた際、もし右金員を弁済期に弁済しないときは、Dから本件建物の所

有権をEに移転すべき旨の条件付代物弁済契約を締結し、右約旨の下にDからEに

対し本件建物の登記済証、上告人名義の委任状、その他所有権移転登記手続に必要

な書類を取りまとめて交付した処、Eは右金員の返済に不安を感じ弁済期前に右書

類を使用して自己の使用人であつた被上告人名義に所有権移転登記手続を経由した

こと、しかして右金員は結局弁済期を経過するもその弁済のなかつたこと、及び本

件建物を処分する権限は上告人から夫Dに附与されていたことの各事実を認定した

上、叙上の経過であるから本件建物の所有権は上告人の手から離れEに帰属してい

るとの趣旨を認定したものと解するを相当とする。さすれば原判決は所論自白(所

論後段にいうところの自白は結局本件建物が上告人に属していないということを主

張した趣旨に帰する)に反して事実を認定したものとは認められないばかりでなく、

原判決は本件建物をもともとDの所有であつたとも断定してはいないのであるから

原判決には所論の違法ありというを得ない。それ故論旨は採用できない。

第一点の三、及び第三点について。

原判決は前段説示のとおり本件建物は現にEの所有に属し、もはや上告人の所有

物でないと認定しているのであつて、そのように上告人にその所有権がない以上は、

その所有権に基づく本件登記の抹消を求むる上告人の請求は失当に帰する筋合であ

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るから、原判決としてはE対被上告人の関係、及び被上告人に対する本件登記が適

法な手続によつてなされたかどうかの点について特に明らかにする必要はないもの

というべきであつて、従つて原判決には所論の違法ありというを得ない(所論違憲

の点もこれを問題とする余地はない)。それ故論旨も採用できない。

第一点の四について。

しかしながら、原判決は所論代物弁済契約を判示弁済期に弁済のない場合は直ち

にその効力を発生するという条件付のものと認定し、且つその条件は成就したもの

と判定しているのであるから、所論選択権行使の余地はないものというべきであつ

て、従つて所論は前提を欠き採るを得ない。

第一点の五について。

しかし、原判決はその判文によつても明らかなように所論乙第二号証によつての

み所論事実を認定したのではなく、これを含む原判決挙示の証拠を綜合の上右事実

を認定したのである。論旨はひつきよう原審の裁量に属する証拠の取捨選択、及び

その証拠の自由な評価に基づく事実認定を非難するものであつて採用の限りではな

い。

第二点について。

しかしながら、原判決はEにおいて所論金員を所論遊戯場経営の為めの資金とす

べくその使途を限定して貸与したものとは認定してはいないのであるから、所論は

結局原判示に副わないものというべきであつて、従つて原判決には所論の違法あり

というを得ない。それ故論旨も採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 下 飯 坂 潤 夫

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裁判官 真 野 毅

裁判官 斎 藤 悠 輔

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