最高裁判所第一小法廷 昭和31(オ)478 判決
主 文
原判決を破棄する。
本件を東京高等裁判所に差し戻す。
理 由
上告代理人弁護士坂吉兵衛の上告理由第二点について。
原判決は、上告人先代Dの所有に属していた本件各土地は昭和二一年八月二三日
同人が隠居したので、家督相続によつて、上告人の所有に帰したものであるが、そ
の登記手続を経由していなかつたこと、そして、上告人は当時自作農創設特別措置
法による農地の買収手続が行われていた折柄なので、この法律にいわゆる農地開放
申請に基づく買収手続によつて、右家督相続に因る所有権移転登記を省略しようと
意図し右Dの承諾の下に本件a所在の土地外二筆の耕作者を上告人と、本件b所在
の土地の外一、二筆の耕作者をE(上告人の妻)と各記載した右D名義の農地買収
申請書を作成の上これを判示F農地委員会に提出したこと、従つて右買収申請はそ
の名義人は右Dであつても、実質上の申請者は上告人に外ならないものであること、
然るに、右農地委員会は右事情を知らず、本件各土地は登記簿上の名義人である右
Dの所有に属し、右買収申請書も同人の申請に係るものと認めて、判示買収計画を
樹立し、次いで、被上告人はこの買収計画に基いて右Dに対する判示買収令書を発
行したものであることを、それぞれ認定判示したものであることは、その判文上明
らかである。してみれば、右買収令書による本件買収処分は、前示買収申請書の申
請人でないものに対してなされた買収計画に基いてなされたばかりでなく、農地開
放の真意のないものの申請を採用してなされたものと判断せざるを得ないが故に、
他に別段の理由のない限りは法律上当然に無効のものと認めるの外ない。従つて、
右に反する原判決は失当であつて論旨は結局理由あるに帰し、原判決は爾余の論点
を審究するまでもなく到底破棄を免れない。
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よつて、本件はこれを原裁判所に差し戻すを相当と認め、民訴四〇七条一項に従
い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 下 飯 坂 潤 夫
裁判官 斎 藤 悠 輔
裁判官 入 江 俊 郎
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