大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和32(オ)208 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告人代理人木内五助の上告理由第一点、第二点について。

臨時農地等管理令五条の規定は、同令七条の二の規定と同様、地方長官の許可を

受くべき旨を定めたに止まり、その許可を受けなかつた場合の法律の効果について

は同令には何ら規定がない。そして同令は農地調整法第一次改正(昭和二〇年法律

六四号)により廃止(附則五条)されると同時に、同法に新たに設けられた五条は、

農地の所有権、賃借権等の設定又は移転は、地方長官又は市町村長の認可を受けな

ければ効力を生じない旨を明らかにし、次いで、同法第二次改正(昭和二一年法律

四二号)においては、その四条において、農地の所有権、賃借権等の設定又は移転

は地方長宮の許可又は市町村農地委員会の承認を受けなければこれを為すことを得

ないこととせられ、これを受けないで為した行為はその効力を生じない旨が定めら

れた。これのら経緯によつて、臨時農地等管理令の前記法条と、これに相当する農

地調整法の改正規定の趣旨を合せ考えると、臨時農地等管理令五条の地方長官の許

可は農地を耕作地として確保するために取締の目的をもつて設けられた規定であつ

て、右許可を受けないで賃借権の設定をすることは、右取締規定に違反するもので

はあるが、その賃借権の設定そのものが無効であると解すべきではない。この点に

関する原判示は正当である。そして本件において上告人は、本件賃貸借が無効であ

るから、これを理由として本件土地の返還を請求するというのではなく、そのよう

な違反ないし無効となるような賃貸借をするわけがないというものであることは、

その主張自体から明らかである。それ故原判決が所論第一点にいうような判示をし

たからといつて、理由不備の違法ありということはできない。

- 1 -

同第三点について。

原審は、本件賃貸借を建物所有の目的で賃貸されたものであり、当事者双方はこ

れを賃貸借の内容としたものと認めるべきものであると判示している。そして右認

定は、挙示の証拠により是認できる。所論は右認定を非難するか又は右認定に副わ

ない事実関係を前提として法令違反をいうものであつて、採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 下 飯 坂 潤 夫

裁判官 高 木 常 七

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!