最高裁判所第一小法廷 昭和32(オ)339 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人弁護士多田紀の上告理由について。
しかし、被上告人(控訴人)は、本件において、訴外Dが商法四二条一項のいわ
ゆる表見支配人である旨の主張をした形跡はなく、原判決も同人をかかる表見支配
人と認定判示してはいないのである。従つて、論旨第三点は採るを得ない。
また、本件記録上、上告人(被控訴人)においても、同法条二項の事実を予備的
に主張したものとは認め難く、結局右訴外人が本件取引につき被控訴人を代理する
権限のないことを控訴会社は本件一部代金支払の当時知得していた旨を主張したも
のと解するのが相当である。そして、原判決は、原審証人E、原審竝びに当審証人
F、同Dの各証言中の右知得した旨の部分は到底信用し難く、原判示挙示の各証言、
本人尋問の結果によれば、控訴会社は訴外Dが被控訴会社の代理権あるものと信じ
て本件売買をしたことを認めるに十分であると認定判示し、その認定判示に経験則
に反した違法は認められない。それ故、論旨第一点、第二点も採るを得ない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 斎 藤 悠 輔
裁判官 入 江 俊 郎
裁判官 下 飯 坂 潤 夫
裁判官 高 木 常 七
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