大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和32(オ)618 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人弁護士大川修造の上告理由第一について。

本件において被控訴人(被上告人、原告)は、本件買主は控訴人(上告人、被告)

個人であると主張し、控訴人は訴外株式会社Dの代表取締役として右会社のために

右売買契約をしたもので買主は会社であると抗争し、原判決は、本件売買は、商人

間の商行為として直接右株式会社Dに買主としての法律効果を生じたが、控訴人は

右会社のためにすることを表示せず被控訴人においても控訴人が右会社の代表取締

役として契約をなすものであることを知らなかつたから、被控訴人は控訴人に対し

ても本件売買契約についてこれが履行の請求をなしうるものであって、控訴人は、

結局被控訴人に対し本件物件の代金を支払うべき義務ある筋合であるとして被控訴

人の本訴請求を認容したものであることは、所論のとおりである。しかし、被控訴

人は、甲第二号証の提出、第一審証人E、同F、同Gの尋問および第一審における

被控訴本人尋問等を通じ、被控訴人は、右Dの存在することも、また、控訴入がそ

の代表取締役として右Dのために契約するものであることも知らず、控訴人個人に

おいて買受けるものと信じて本件売買契約をなしたものである旨等を主張して結局

原判示のごとき控訴人個人の責任をも追及したものであることを窺知するに難くは

ないのである。されば、原判決は、当事者の申し立てない事項について判決をなし

た違法があるとはいえない。

同第二、第三について。

しかし、本件売買契約につき上告人が訴外株式会社Dのためにすることを示さず

被上告人も上告人が右訴外会社のためにすることを知らなかつた旨の原判決の認定

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は、その挙示の証拠関係に照し首肯できないわけではない。されば、所論は、結局

原審が適法になした証拠の取捨、判断、事実の認定を非難するに帰し、採ることが

できない。

同第四について。

しかし、控訴人(上告人)が本件売買の目的物件についても十分調査した結果こ

れを細断するには相当な困難を伴い少くとも屯当り五、六千円位の切断費用を要す

るものと予想した旨の原審認定は、その挙示の証拠に照しこれを肯認することがで

きる。その他原判決の適法に確定した事実関係の下において本件売買においてその

要素に錯誤がない旨の原判決の判断はこれを正当として是認することができる。そ

れ故、所論は、採ることができない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致の意見で、主

文のとおり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 下 飯 坂 潤 夫

裁判官 高 木 常 七

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