大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和32(オ)723 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人弁護士宗宮信次、同大嶺庫、同川合昭三の上告理由第一点について。

所論の点に関する原判示は必ずしも、明瞭ではないが、判文を熟読すれば、原判

決は、本件売買契約の確実に成立したのは判示乙第四号証、乙第一号証が上告人の

父Dから被上告人に手交された昭和二六年一〇月二六日であり、右Dはその際上告

人の代理資格を以て契約を締結した趣旨を認定しているものと解せられないことは

なく(原判決がそのように認定したからといつて、上告人主張の契約と異つた別個

の契約を認定したことにはならない)、そして、所論の点に関する原判決挙示の証

拠を照合すれば、そのような認定もできないわけのものではない。さすれば原判決

には所論の違法ありというを得ず、所論は採用できない。

同第二点ないし第五点について。

しかし、(イ)、所論第二点(一)指摘の部分を除外しても、原判決認定のよう

な事情の下では、被上告人において訴外Dに判示代理権ありと信ずるに付き正当の

事由ありと解するを相当とするばかりでなく、(ロ)、右Dが当時八〇才の老人で

あつたからといつて、所論第三点指摘のような点を説示しなければ、同人に家政処

理の権限があつたものと認定できないわけのものではなく、また、(ハ)、所論第

二点(五)及び所論第五点主張のように右Dが老令である上に被上告人が上告人の

近隣に居住していたからという一事だけで、被上告人において判示代理権あること

を軽々しく信じたという過失あるものと断定できるわけのものでもなく、更にまた、

原判決は所論第二点(三)及び同(六)の点につき、それぞれ説示しているものと

認められないこともない。そして、その他の所論は原判決がその専権によつて証拠

- 1 -

の取捨判断をなし、これに基いてなした自由な事実認定と相容れない事実を主張す

るか、あるいは原判決の認定に添わない事実を主張して原判決の事実認定あるいは

法律判断を非難して原判決に所論の違法ありというに過ぎない。所論引用の各判例

は本件に適切のものとは認められない。それ故所論はいずれも採用できない。よつ

て、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い裁判官全員の一致で主文のとおり判決す

る。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 下 飯 坂 潤 夫

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 高 木 常 七

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!