大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和32(オ)787 判決

主 文

原判決を破棄する。

本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理 由

上告代理人弁護士玉井潤次名義の上告理由書について。

昭和二二年一二月二二日の被上告会社株主総会において旧社長であつた上告人か

ら新たに社長となつた今井洞流に引継がれた被上告会社の決算書(乙第三号証)に

本件建物の記載が脱漏していたこと。このことから、本件建物の所有権の帰属問題

をめぐつて被上告会社と上告人との間に紛紜が生じ、その結果当時株主総会の議長

であつたDの仲裁により両者の間に妥協が成立し、被上告会社は上告人の面目を立

てさせる趣意で乙第三号証の決算書を承認することとし、他方上告人は本件建物を

直ちに被上告会社に返還すべき旨約し、次いで、上告人のために所有権移転の登記

手続を経由したというのであつて、以上は原判決が当事者間に争いない事実及び挙

示の証拠によつて確定した事実であり、その判示するところは、いささか明確を欠

くが、要するに株主総会の席上本件係争物件の所有権の帰属に関し双方紛紜の末被

上告会社は上告人の面子を重んずる趣旨で、右物件を登記簿上一時上告人名義に移

すが、再び直ちにこれを登記簿上被上告会社の所有名義に移し返して貰うべく約束

したという趣旨に帰する。しかしながら他人の面子をたてるというだけで、会社所

有の不動産を登記簿上一時他人の名義に移し次いで再び直ちにこれを会社の所有名

義に移し返して貰うことを約束するというが如きこと、しかもこれを書面に作成し

て確認したというのでもなく、ただ単に口頭で、しかも株主総会という公の場で約

束したというが如きことは、他に特段な事由が附け加えられない限りは取引の通念

上たやすく納得し得られないところである。然るに原審は原判決の説示以上の考慮

を運らした形跡もなくただまん然と、前叙内容の口頭上の契約が成立したものと判

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断しているのであつて、右は審理不尽延いて理由不備の誹を免れないものと言わざ

るを得ない。それゆえ論旨は結局理由あるに帰し、原判決は到底破棄を免れ得ない

ものと認める。

よつて、民訴四〇七条に従い、裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 高 木 常 七

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 下 飯 坂 潤 夫

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