大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和32(オ)95 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人弁護士高井吉兵衛の上告理由第一点について。

原判決は、その挙示の証拠によつて、被上告人の所有に属する本件土地の前所有

者Dは右土地の上に戦前、十数戸(戦災により焼失)の貸家を所有し、上告人の娘

Eは罹災前からその内一戸を賃借し、上告人とともにこれに居住していた、との事

実を認定の上、上告人は罹災都市借地借家臨時処理法二条一項にいわゆる建物の借

主ではないから、上告人が判示賃借の申出をしたとしても、賃借権を取得すべき筋

合ではない、と判断しているのである。上告人は右法条にいう借主の意義はこれを

広義に解釈し、上告人のように借家人と親子関係にある同居人の如きものもこれに

包含するを相当とすべきであるとの見解の下に、原判決はこの解釈を誤つた違法が

あると主張する。しかし、右法条はそのいわゆる建物の借主の意義を限定的に規定

しているのであつて、これを所論のように拡張して解釈すべき根拠を見出し得ない

が故に、所論は、到底採用できない。

同第二点ないし第五点について。

原判決は、前示事実関係を認定した上、更にその挙示の証拠によつて、上告人が

本件土地の上に判示建物を建築するについては被上告人の承諾を得た事跡もなく、

固よりその敷地を賃借したこともない、との事実を認定し、従つて、上告人は本件

土地の上に右建物を所有することによつてその敷地を不法に占有するものである、

と判断しているのであつて、その判断は、当裁判所もこれを正当と認める。そして、

この場合、上告人の家族である娘Eにおいて、本件土地に対して所論の賃借権を有

し、Eが上告人において本件土地にその名義の建物を所有することを許容していた

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としても、またEが上告人を扶養しており、E及び上告人ともども所論建物を本件

土地上に所有することが、その生活維持の為め絶対必要事であるとしても、Eにつ

いてはともあれ、上告人が本件土地の不法占有者たることには何らの影響なきもの

と解するを相当とする。従つて、原判決に所論法律の解釈を誤つた違法のないのは

勿論、原判決が、右Eについて前示臨時処理法に基く賃借権の発生を確認しないか

らといつて判断の遺脱あるものとも言い難い。それ故、所論も採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 下 飯 坂 潤 夫

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 入 江 俊 郎

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