最高裁判所第一小法廷 昭和33(オ)172 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人弁護士宮原守男の上告理由第一点について。
所論の点に関する原判示は必ずしも明瞭ではないが、その判文を熟読すれば、原
判決は所論乙第二七号証を一つの証拠資料とし、これとその他の挙示の証拠とを綜
合の上、被上告人の交付を受けた売渡証書は乙第二七号証そのものであるか否かは
ともかく上告人の押印あり且つ買受人の氏名及び売買金額の記載のない売渡証書の
交付を受けたものであるとの趣旨を認定しているものと解するを相当とし、右証拠
を照合すればそのような認定も可能でないこともないのである。されば原判決には
所論の違法ありというを得ないのであつて、所論は採るを得ない。
同第二点について。
原判示のような事情(但し判示売買契約締結までの)の下で、被上告人が訴外D
に上告人を代理して判示契約を締結するにつき代理権があつたものと信ずるについ
て正当の事由があつたものとした原判決の判断は相当でないと断じ得ないばかりで
なく、判示の場合、被上告人が上告人の委任状印鑑証明書及び登記済権利証等の呈
示交付を受けず、また上告人に対しDの代理権の有無を照会しなかつたからといつ
て、右究極の判断に消長を来すものでもない。
所論は本事案に対する独自の観察且つ想定の下に、判示場合に必ずしも適切でな
い各判例を援用しつつ、原判決が民法一一〇条の解釈適用を誤つた如く攻撃するだ
けのものであつて、採るを得ない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
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最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 下 飯 坂 潤 夫
裁判官 斎 藤 悠 輔
裁判官 入 江 俊 郎
裁判官 高 木 常 七
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