大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和33(オ)87 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人弁護士川添清吉の上告理由第一、二点について。

しかし原判決は本件消費貸借および抵当権設定につき、上告人は終戦前には被上

告人とりんごの取引をしたことがあるが、終戦後は被上告人とではなく、訴外Dと

取引をするようになつたものであること、その結果上告人は右Dに対し昭和二五年

六月末現在において九一一、〇〇〇円のりんご委託販売による前渡金の残額債権を

有するに至つたこと、および右Dは生活費に窮し上告人から二五〇、〇〇〇円を借

用したものであること、並びにDはその際被上告人の実印を被上告人に無断で持出

し、本件公正証書作成並びに抵当権設定登記申請に関する委任状を偽造して本件公

正証書を作成するとともに係争土地につき抵当権設定登記を申請したものである旨

を判示したのであつて、右の事実は原判決挙示の証拠によつて認定し得ないではな

く、また記録によつても上告人は原審において、右消費貸借および抵当権設定に関

するDの各所為はいずれも被上告人から授与された適法の代理権に基いてなされた

ものである旨を主張しただけであつて、未だ以て所論の如き表見代理の主張をした

趣旨とは解し得ないから、原判決には所論の判断遺脱、釈明義務違背、理由不備、

法令違反等の違法があるとは認められない。それゆえに論旨は採用しがたい。

第三点について。

所論の各証拠によつても当然所論の事実を認めなければならぬものではないから、

論旨は、原判決に影響を及ぼすべき法令違背の主張として採用しがたい。

第四点について。

しかし原判決は、被上告人の長男Dが、本件消費貸借および抵当権設定の各契約

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締結そのものについて、被上告人を代理すべき権限を有しなかつた事実を認定した

趣旨であること判文上おのずから明白であり、原判決挙示の証拠によれば右の如く

認定し得られないではないこと前叙のとおりであるから原判決には所論の如き違法

はなく、論旨は採用しがたい。

第五点について。

しかし、所論の各証拠によるも、所論承認の事実を当然認めなければならぬもの

ではないから、原判決が承認の事実を認め得る証拠はない旨判示したのは、正当で

あつて、所論の違法は認められない。

よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとお

り判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 高 木 常 七

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 下 飯 坂 潤 夫

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