大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和34(オ)40 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人広井義臣の上告理由第一点(イ)の(1)について。

論旨は要するに、D会長が、判示会議の招集をしなかつたのは、正当の事由に基

づくものであるから、当時の農地調整法施行令三〇条の二による解任は違法である

というのである。

しかし原判決(及びその引用する一審判決)によれば、D会長は、委員多数の要

望にも拘らず、昭和二四年三月二日を買收期日とする買收計画を審議するための委

員会を招集せず、また同年四月二三日委員から適法な招集要求があつたにも拘らず、

なおかつその要求の会議を招集しなかつたというのであるから、同委員会が同人を

会長として不適任であると認め、解任したからといつて、直ちに違法とすることは

できない。�

同人が所論の如く、かねて農地改革に熱意を持つていたかどうかということは、

右解任の適否を左右するものではなく、また、その以前に、委員の一部から会長解

任の決議をされたことがあつたとしても(右決議は、委員会の会議においてなされ

たものではなく、従つて法律上なんらの効力をも有しないものであることは、原判

示のとおりである)、そのことのゆえに同人が会議を招集しなかつたことを正当化

するものではない。

同(イ)の(2)について。

論旨は、村農地委員会が同委員会規程五条で、会長が事故あるときは委員中の最

年長者が会議を招集する旨規定しているのは、農地調整法施行令三〇条二項に違反

して無効である。行政機関の組識は法令を以つて定めるべきであるから、Eが委員

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の最年長者なるの故を以つて招集した委員会でD会長を解任したのは無効であると

いうのであるが、原審はこの点に関し所論の理由なきことを詳細に説明しており、

その説明は当裁判所も正当とするから論旨は採るを得ない。�

論旨は、行政機関の組織は法令を以つて定むべきであるというが、権限を行使す

る行政機関の組織は、いかにも法令で定められなければならぬけれども、本件の場

合、権限を行使するのは合議体たる委員会自体であり、その委員会については法令

の規定を要すること勿論であるが、委員会内部の運営方法の細目等は必ずしも法令

の規定を要するものではなく、法令の規定ないしその精神に反しないかぎり、法令

の規定を補充する意味において、合議体自体が自主的に決定し得るものと解される

から、この点の論旨も採るを得ない。

同(イ)の(3)について。

論旨は、一、二審判決が、D会長の招集しなかつた会議を「昭和二四年三月二日

を買收期日とする買收計画を審議すべき委員会云々」としているのは、「新たなる

買収計画を審議すべき委員会」の謂いであるか又は「さきにした買收計画を取消す

決議をするための委員会」の謂いであるか明確でないというのであるが、そのいず

れであつても、D会長が、委員らの要求する会議を招集しなかつたことにはかわり

がないのであるから、論旨は採るを得ない。

同(ロ)について。

論旨は、本件買収計画には、上告人の保有地を選定するについて違法があるとい

うのであるが、買収農地については、農地所有者は選択権をもつものでないことは、

当裁判所大法廷の判示するところであるから(昭和二八年一一月二五日判決、集七

巻一一号一二七三頁参照)、農地所有者は、保有地についても選択権をもたないも

のといわなければならない。所論自創法六条四項は、農地買収計画を定めるについ

て勘案すべき事項を規定してはいるが、この項定は、その場合において地主の保有

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希望に拘束さるべき旨を定めたものではないから、この規定に違反しているかどう

かについて地主は主張する法律上の利益を有しない。所論農林次官、農政局長の通

達は法令ではないから、これに副わない処分をしたからといつて、直ちにその処分

を違法とすべきではない。

なお、論旨は、本件買収処分は、上告人から提出したFに対する贈与に因る所有

権移転の許可申請について、その許否決定をしないままでなされたものであるから

違法である旨主張するが、当時右所有権移転について知事の許可のなかつたことは

上告人も自認するところであるから、右贈与の効力は当時いまだ発生していなかつ

たものといわざるを得ず、しかる以上、所論土地は依然として上告人の所有地であ

り、従つて上告人の所有小作地として買収計画にとり入れられてもやむを得なかつ

たものとせざるを得ない。

当時村農地委員会に、もし所論の如く、右所有権移転の許可申請書を遅滞なく知

事に進達しなかつた事実があるとすれば、その怠慢は遺憾とすべきではあるが、原

判決によれば、「村農委が、本件買収計画の樹立にあたり、その点について特に職

権を濫用したとみるべき事実は証拠上認められない」というのであるから、その処

分に仮りに不行届の点があつたとしても、処分そのものを違法とすることはできな

い。

同(ハ)について。

論旨は、原判決は買収計画の効力発生時期について事実を誤認し、法の適用を誤

まつている旨主張し、原審が「買収令書作成後は異議に基づいて買収計画を取り消

すことはできず、もし取り消してもその取消処分は無効である」旨判示しているの

を非難するのである。

しかし、原審の引用する一審判決によれば「村農地委員会は、一旦原告(上告人)

の異議を容認し、買収計画を取り消す旨の決議をしたが、その旨の決定書謄本を送

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達せず、それのいまだ効力を発生しないうちに、右決議を取り消して原告の異議を

却下する旨の議決をなし、同時にその旨の決定書謄本を送達したのであるから、右

買收計画取消議決について考慮する余地はない」というのであつて、結局本件では、

買収計画は取り消されていないというに帰するから、所論買收令書交付後買収計画

の取消ができるかどうか、その可否等の議論は、本件買収処分の適否とは関係がな

く、また、買収令書の交付時期も、結果に関係はない。(なお、原審が適法に確定

したところによれば、本件買収令書は昭和二四年九月一二日付で発行され、その頃

上告人にこれを交付しようとしたところ、上告人は拒んでこれを受領しなかつたと

いうのである。この事実は挙示の証拠関係に照らし首肯できなくはない)

同第二点について。

論旨は、県農地委員会のする農地買収計画の承認は、法律上のいわゆる認可行為

であるから、買収計画は右承認によつて効力を生ずるものである旨主張し、承認前

の日を買収期日とする本件買収計画は無効であるというのであるが、買収計画が県

農地委員会の承認によつて効力を生ずるというのは、上告人独自の見解である。買

収計画は公告、縦覧によつて効力を生ずるのである。ただ買収処分は、県農地委員

会の承認後にすべきである旨を定めているに過ぎない。のみならず、本件の場合、

県農地委員会の承認は、買収期日前になされていることは、原審の適法に確定した

事実によつて明らかであるから、論旨は理由がない。

同第三点について。

その(1)は、本件買収計画の承認は、D会長解任の問題が解決するまでその効

力を留保する旨の条件付でなされたものである旨主張するが、かかる事実は原審で

主張されておらず、原審も認めていない事実であるから、採るを得ない。

その(2)は、上告人は本件買収令書の交付を受けてはいないというのであるが、

上告人は一審で、それを交付されようとしたが受領を拒んだ旨自白し、二審で右自

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白を取り消そうとしたが、原審にこれを許さなかつたものであること記録上明らか

である。それゆえ論旨は採るを得ない。

原審は、右令書を上告人に交付しようとした日を昭和二四年九月一二日頃として

いるが、かりにその日時について所論のような誤りがあるとしても、上告人がその

受領を拒んだ事実にはかわりがないのであるから、論旨は採るを得ない。

(3)の論旨は、訴願裁決及び買収計画の承認前になされた買収処分は無効とす

べきであるというのであるが、本件買収計画の承認は、昭和二四年六月三〇日の県

農地委員会でされ、買収令書の日附は同年九月一二日になつていることは、原審の

確定したところによつて明らかであるから、承認前に買収処分があつたものという

ことはできず、また、訴願裁決後でなければ承認、買収処分をしてはならぬことに

はなつているが、本件のように、すでに承認があり、買収令書の交付もあつた後に

(上告人はその受領を拒んだが)異議申立があつたような場合は、所論裁決が、買

収令書より後になることは当然のことであるといわなければならない。それゆえ論

旨は採るを得ない。引用の大阪高等裁判所の判決は、本件と事案を異にし、本件に

は適切でない。

同第四点について。

論旨は、原審は、本件買収令書を交付しようとした日時及び誰が交付しようとし

たか等について事実を明確にしていない旨主張するが、上告人は、右令書の受領を

拒んだとみずから自白しているのであるから、それ以上所論の各事実を明らかにし

なければならぬ必要は認められない。

同第五点について。

論旨は、本件において買収計画の効力の発生したのは、訴願裁決のあつた昭和二

五年八月二二日である旨主張するが、その理由を認め得ないことは前叙のとおりで

あり、また令書交付にかわる公告が遅延したからといつて、買収処分を無効にしな

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ければならぬものではない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 高 木 常 七

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 下 飯 坂 潤 夫

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