大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和34(オ)80 判決

主 文

原判決を破棄する。

本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

理 由

上告代理人弁護士志貴三示の上告理由について。

原判決は、控訴人(上告人、被告)と被控訴人(被上告人、原告)は、昭和二三

年頃から昭和二九年二月頃までは隣人として普通の交際を続けて来たが、被控訴人

所有の建物の一部を控訴人が買い取る契約をしたことに関し双方に意見の相違を来

し不仲となり、これに基因して(一)昭和二九年八月中頃の夜被控訴人方店舗前路

上において訴外Dと控訴人が些細のことから口論をはじめたところ、その場に居合

せた訴外E、Fにも聞える様に控訴人はDに対し「町内には跛と地所泥棒と片輪し

かおらん」と申向けたがその言辞中地所泥棒とは被控訴人を指すものなること、(

二)同年一〇月九日頃G新聞社主催の写真コンクールがあり、同日午後二時頃モデ

ル孃の写真をとつている数十人の人が店舗の内外に集まつたいた際、控訴人は被控

訴人方に向い「地所泥棒」と申向けたことを認めることができる旨認定した上、右

のごとき控訴人の言動が刑法上の名誉毀損罪を構成するか侮辱罪を構成するかに論

なく民法七〇九条、七一〇条に所謂名誉に関する権利侵害として不法行為を構成し

控訴人は被控訴人に対し慰藉料を支払うべき義務あること明白であるというべきで

ある旨説示し、その額は三万円となすを相当とする旨判示したことは、所論のとお

りである。

しかし、原判決認定の所論(一)の判示中には被控訴人がその場にいたかどうか

の判示がなく、また、判示Dと被控訴人との関係について何等判示するところがな

い。次に、判示(二)の「店舗」とは何人の店舗であるかも明示がなく、かつ、判

示コンクールと被控訴人との関係についても何等判示されていない。従つて、右(

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一)(二)の判示だけでは、原判示控訴人が被控訴人と不仲となつた結果控訴人が

被控訴人の名誉を毀損する意思をもつてなされた所為であるか否か不明であつて、結

局原判決は審理不尽による理由不備の違法あるものといわなければならない。され

ば、この点で論旨は理由あるに帰し、原判決は破棄を免れない。

よつて、民訴四〇七条一項に従い、裁判官の全員一致で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 下 飯 坂 潤 夫

裁判官 高 木 常 七

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