大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和35(オ)1353 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人弁護士川上隆、同鈴木俊光の上告理由第一点について。

原判決の引用にかかる第一審判決は、挙示の証拠により認定した判示の経過に基

き、昭和三三年一月一日以後上告人は同三二年五月分以降の賃料については即時に

支払わなければならない関係にあることを明らかにした上、上告人は同三三年一月

二〇日、同三二年四月分の賃料を支払つたのみで(この賃料は、被上告人が上告人

方に延滞賃料の支払請求に出向いた際上告人妻から受取つたもので、最も古い延滞

分に充当されたものである。)、同三三年一月二一日附の催告に対しても、支払の

資料十分と言いながら同月二四日附回答書を発したままに何ら積極的に支払の意思

あることを認められる態度を示すことなく、右催告において定められた猶予期間を

徒過したものであると認定し、叙上の経過に徴し、本件契約解除の意思表示は信義

則に反するものと言うことができないと断定しているのであり、以上の事実上法律

上の判断は当裁判所もこれを正当として是認する。所論は右第一審判決の認定して

いない事実を差し加えた上独自の観点に立つて、原判決に法律の解釈適用の誤りあ

りと主張論議するものであつて、採るを得ない。

同第二点について。

原判決竝びにその引用にかかる第一審判決の認定した事実関係の下においては、

仮に原判決の認定しない上告人主張の事実関係が認められるとし、これを斟酌して

も、被上告人のなした本件契約関係を目して権利濫用ということはできないとした

原判決の判断はこれまた正当として是認せざるを得ない。所論は独自の見解という

の外なく、採用できない。

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同第三点について。

しかし、供託した旨の主張の中に提供をしたけれども受領を拒絶された旨の主張

が常に必ず包含されているものとは解するを得ないばかりでなく、供託をした旨の

主張のあつた場合に裁判所はその前提要件たみ事実を必ず釈明陳述させなければな

らない筋合があるわけのものではなく、また本件の場合乙第二号証の記載からして

その前提要件たる事実が主張されているものとは必ずしも解さなければならない道

理があるわけのものでもない。そして他方記録によれば、上告人は被上告人に対し

地代を提供したがその受領を拒絶された旨の準備書面上の記載を特に陳述していな

いことが窺い知られるのである。されば上告人主張の供託について、上告人におい

て被上告人に対し賃料を現実に提供した旨の主張も立証もないからその主張にかか

る供託は不適法で弁済の効力を認めることができないとした原判決の判断は正当で

あり、原判決には民法四九四条の解釈を誤つたかきんありというを得ない。右に反

する所論は独自の見解であつて採るを得ない。

よつて、民訴三九六条、三八四条一項、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一

致で主文のとおり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 下 飯 坂 潤 夫

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 高 木 常 七

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