大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和35(オ)161 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理 由

上告代理人大島正恒の上告理由一について。

本件において、被上告人が、所論賃貸借解約申入れの意思表示をし、さらに賃料

の不払を理由とする賃貸借契約解除の意思表示をもした事実のあることは、原審の

確定したところによつて明らかである。�

けれども、右二つの意思表示は、互に相容れないものではなく、また、本件の如

き請求をなすについて、被上告人が、右二つの意思表示を共に主張することは、な

んら法律の禁ずるところではない。ただ、解除の意思表示が、その効果を発生した

場合、解約申入れの意思表示がその対象を失ない、失効するだけのことである。

されば、解約申入れの意思表示があつた故をもつて、上告人はその本来の賃料支

払義務を免れるものではなく、催告があつた場合は、これに応じて延滞賃料の支払

いをなすのが当然である。

論旨は、右に反する独自の見解に立つて原判決に所論の違法ある如く主張するも

のであるから、採るを得ない。

同二について。

しかし、本件賃料債務が取立債務であるとするに足る証拠はなにもない旨の原審

判断は、挙示の証拠関係に照らし、首肯できなくはない。

また、所論催告は、本件延滞賃料を被上告人の住所に持参して支払うことを禁ず

る趣旨とは認められないとする原審判断も、社会通念に照らし、首肯し得る。所論

引用の判例は、本件に適切でない。

論旨は、ひつきよう、原審の適法にした証拠の取捨判断及び事実認定を非難する

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か、独自の見解に立つて原判決を争うに帰するから、採るを得ない。

同三について。

しかし、本件建物の統制家賃額だけを提供しても被上告人はこれを受領しないこ

とが明らかであつたと認めるに足る証拠はない旨の原審判断は、挙示の証拠関係に

照らし、首肯し得なくはない。

所論は、原審の適法にした事実認定の非難であるから、採るを得ない。

同四について。

しかし、本件解除権の行使が、信義則に反し、権利の濫用であると目すべき事情

は認められない旨の原審判断は、挙示の証拠関係に照らし、首肯できなくはない。

従つて、原判決には、所論違法は認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、

主文のとおり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 高 木 常 七

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 下 飯 坂 潤 夫

裁判官 斎 藤 朔 郎

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