大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和36(オ)15 判決

主 文

原判決中、詐害行為取消請求および詐害行為取消を理由とする登記抹消

登記手続請求に関する第一審判決に対する控訴を棄却した部分を破棄し、これらの

部分に関する本件を仙台高等裁判所に差し戻す。

その余の請求に関する附帯上告人の上告を却下する。

附帯上告費用中前項の請求に関し生じた部分は附帯上告人の負担とする。

理 由

上告代理人丸岡奥松および附帯上告代理人内野房吉の各上告理由について。

原判決引用の第一審判決は、原告(上告人)が昭和二九年六月一日訴外Dとの間

に、同訴外人所有の本件宅地建物を代金二〇〇万円で買受けるべく、売買完結の期

限を昭和三〇年一月一〇日とし、同日までに右訴外人において原告に対し負担する

債務を完済しないときは売買本契約をなし、これを完済したときは予約はその効力

を失なう旨の売買予約契約を締結し、昭和二九年六月四日右売買予約契約による所

有権移転請求権保全の仮登記を経由し、ついで同年一二月三一日右当事者間におい

て右売買予約に基づく売買本契約を締結し、昭和三〇年一月六日所有権移転登記を

経由した旨を確定したものである。

右判決は、被告(被上告人)が昭和二九年一二月三一日当時訴外Dに対し一四八

万三六三六円の商品売掛金支払のため振出を受けた手形債権を有していたのに、右

訴外人は本件宅地建物を措いて他にはみるべき資産を有しなかつたから、前記売買

本契約の締結は、被告の右訴外人に対して有する債権の一般担保を失なわしめ、こ

れを詐害するものであると判示する。しかしながら、昭和二九年一二月三一日にお

ける売買本契約の締結は、同年六月一日における売買予約契約の履行としてなされ

たものであること前示のとおりであるから、たとえそれによつて他の債権者の一般

担保を減少ないし喪失せしめ、事実上弁済の途を断つとしても、それだけでは詐害

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行為とならないものというべきである。また、本件の売買予約契約において、売買

本契約は昭和三〇年一月一〇日までに右訴外人において債務を完済しない場合に限

りこれをなす旨の約定であつたのに、当事者の含意をもつてこれを昭和二九年一二

月三一日に早めたものであること前示のとおりであるが、本件売買予約による所有

権移転請求権については、その権利を保全する仮登記が経由されていること前示の

とおりであるから、特段の事情のない限り、その売買本契約成立の時期如何は、他

の一般債権者の利害に影響のないものというべく、そして原判決は本件売買本契約

成立の時期を当初の約定より若干早めたことが、とくに一般債権者を害するに至る

と認むべき特段の事情に当るものであることについては、何らこれを確定していな

いのである。

されば、本件については、昭和二九年六月一日における売買予約契約締結の時に

おいて既に詐害行為の要件が具備していたか否かが審理判断されねばならないもの

であるところ、原判決は、右日時における被上告人の訴外Dに対する債権の存否お

よびその額、右訴外人の財産状態等詐害行為の成立要件について何ら審理判決せず、

昭和二九年一二月三一日現在における右要件事実の存在をもつて直ちに訴外Dの前

示行為が被上告人に対し詐害行為となるものと判定したのであるから、原判決はこ

の点において法律の解釈を誤つた違法があるといわなければならない。従つて、原

判決中、詐害行為取消請求およびこれを理由とする登記抹消登記手続請求に関する

部分を破棄し、これを右の点の審理のため、原審に差し戻すべきである。なお、原

判決中上告人および附帯上告人のその余の請求に関する部分については、附帯上告

人において上告理由を主張しないから、これに対する附帯上告人の上告は不適法と

して却下すべきである。

よつて、民訴四〇七条、三九九条ノ三、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一

致で、主文のとり判決する。

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最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 斎 藤 朔 郎

裁判官 長 部 謹 吾

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