大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和36(オ)764 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理 由

上告代理人堀切真一郎、同伊藤俊郎の上告理由一について。

所論は、訴外Dが上告人A1を別居させることが上告会社設立の前提条件となつ

ていることは、本件調停調書(甲第三号証)の文言体裁等から認められない旨、し

たがつて、後見監督人Eは無条件で本件現物出資に同意していた旨を主張する。し

かし、前記調停で上告会社を設立することにしたのは、前記Dの提案によるもので

あつて、本件現物出資をする被上告人側としては、Dが上告人A1を速かに別居さ

せることを確約したからこそ、右提案を受け入れたのであり、かつ右調停で訴外E

が新らたに被上告人の後見監督人になることにしたことも、もしDが右確約を履行

しない場合には上告会社の設立を阻止するためであつた旨の原審の認定は、原判決

(その引用する第一審判決をふくむ。以下同じ)挙示の証拠関係に照らし、首肯で

きないわけではない。所論は、ひつきよう原審の裁量に属する証拠の取捨判断、事

実の認定を非難するに帰し、採用できない。

同二について。

(イ)後見監督人を選任する審判(民法八四九条、家事審判法九条一項甲類一四

号)の効力は、これを受ける者に告知することによつて生ずるのであるから(家事

審判法一三条)、第三者に対する関係においては就職の届出の時から生ずる旨主張

する所論は独自の見解であつて、採用できない。�

(ロ)論旨指摘の準備書面(記録六五二丁裏)を調べてみても、論旨のような主

張はなされていない。それ故、所論は、原審において主張しない事実に基づく主張

に帰し、採用できない。

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(ハ)所論各物件が被上告人の本来の家業である酒造業を行うに不可欠のもので

あつて、同人にとつて極めて重要なものであるとの原審の認定は、原判決挙示の証

拠関係に照し、是認できる。右物件の価格が極めて低廉であることは原判決の認定

しないところであるのみならず、その一事をもつて被上告人にとつて重要でないと

はいえない。所論も、また独自の見解であつて、採用できない。

同三について。

所論は、上告人A1、同A2の両名は訴外F酒類製造株式会社の職員として本件

建物を占有している旨、かつ、被上告人と右訴外会社との賃貸借契約は現に存続し

ている旨を主張しているにかかわらず、原判決はこの点に関する判断を遺脱してい

ると非難する。しかし、原判決は、右上告人両名の本件家屋の占有は、同人らが独

立してこれを占有するものと認定しているのであり、その認定は原判決挙示の証拠

関係に照し、是認できるのであるから、訴外会社の賃借権の存続の有無を判断する

必要がない。それ故、所論は採用できない。

同四について。

抵当権の設定されている物件を占有している第三者が、債務者のために右抵当権

付きの債務を任意に弁済したとしても、右第三者は債務者に対する求償債権のため

に、右物件について留置権を取得するものでないとした原審の判断は、正当である。

所論は独自の見解であつて、採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、

主文のとおり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 斎 藤 朔 郎

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 長 部 謹 吾

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