大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和37(オ)1299 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人諫山博の上告理由第一点について。

原判決およびその引用する第一審判決挙示の証拠によれば、被上告会社が、自己

の賃借地上に社宅を建築するため、社員であつた上告人の名義で訴外住宅金融公庫

から建築資金の融資を受けるとともに、不足分は被上告会社において負担し、会社

の定めた建坪数の範囲内において上告人の設計希望をきき、上告人名義で建築業者

に建築を請け負わせて本件建物を完成させた旨および被上告会社は、爾後、自らの

負担で公庫に融資金を返還し、上告人名義で加入していた火災保険料、同人名義で

課せられた固定資産税を支払つてきた旨の原審の認定は是認でき、右事実関係のも

とにおいては、被上告会社が本件建物の所有者であることを肯認した原審の判断は

正当である。

所論は、原審の認定と相容れない事実を援用し、証拠の取捨判断および事実認定

に関する原審の専権行使を攻撃するものであり、採用できない。

同第二点について。

被上告会社が社宅を建築するため、社員であつた上告人の名義で公庫から建築資

金の融通を受けた行為は、直接、所論住宅金融公庫法の法条によつて禁止されてい

るものとは認められず、また、必らずしも公序良俗に違反する無効の行為というこ

とはできない。のみならず、たとえ該行為が無効であるとしても、その故に直ちに、

被上告会社と上告人間の判示所有権移転登記に関する合意が無効となる筋合いのも

のではない。けだし、被上告会社は上告人名義でした請負契約を原因として本件建

物の所有権を取得したものであり、本件建物の所有者の資格において右所有権移転

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登記に関する合意をしたものであるところ、法律上、右所有権移転登記の合意の効

力が本件貸付金契約の効力に依存するというような関係は毫も存在しないからであ

る。所論は右と異なる見解に立脚して、原判決に所論の違法があるというものであ

つて、採用するに由ない。

同第三点について。

原審の認定によれば、上告人が本件建物の使用につき被上告会社に支払つていた

社宅料は、名目的のもので、一般の家賃にはほど遠い低廉なものであるのみならず、

本件建物は被上告会社がその社員の福利厚生施設の一環として建設した社宅であつ

て、被上告会社の社員に限つてその使用を許容し、社員たる身分を失えば社宅使用

の権限も当然に消滅する関係にあつたものであり、本件社宅の使用関係は通常の賃

貸借ではなく、会社の社員たることを前提としてその使用を許容する特別の関係で

あるというのである。されば、本件建物の使用関係について借家法の適用がないと

した原審の判断は正当である。所論は、本件建物の使用関係に関する原審の認定と

相容れない事実を前提として本件建物の使用関係につき借家法の適用があると主張

し、原判決に法令違背があると非難するものであり、採用できない。

同第四点について。

原審が上告人の本件建物の不法占拠に基づく損害金を算定するにつき、従前の使

用料の金額を基準としたからといつて不当ではなく、原判決には理由そごの違法は

認められない。所論は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 横 田 正 俊

裁判官 河 村 又 介

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裁判官 石 坂 修 一

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