大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和37(オ)412 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人目代誠吉の上告理由第一点について。

代理人がその権限を踰越し、署名代理の方法によって本人名義の約束手形を振出

した場合でも、民法一一〇条の規定が適用されることは、当裁判所の判例(昭和三

六年(オ)第二八二号同三七年三月二七日第三小法廷判決民集一六巻三号六三二頁

参照)とするところであって、右と同趣旨の原判決の判断は正当である。所論は、

右と異った見解に立って原判決を非難するものであり、採用できない。

同第二点について。

手形の振出について民法一一〇条を適用する場合には、当該手形の受取人を同条

にいう「第三者」と解すべきことは当然であり、この場合、受取人が振出代理人の

機関として振出人の氏名を記載したとしても、右の解釈を左右すべきものとは解せ

られない。所論は、右と異なる見解に立って原判決を非難するものであって、採用

できない。

同第三点について。

本件手形上における上告人の氏名は訴外Dの依頼により被上告人が記載したもの

である旨の原審の認定は、原判決挙示の証拠により肯認できないことはない。本件

約束手形振出の経緯について原審の確定した諸般の事情のもとでは、被上告人は右

訴外人が上告人を代理して本件手形を振出す権限を有すると信じた旨、及び被上告

人が右のように信じたことには正当の理由がある旨の原審の判断は正当である。所

論は、ひっきょう原審の適法にした証拠の取捨判断、事実認定を非難し、右と異っ

た見解に立って原判決を非難するに帰し、採用できない。

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同第四点について。

原判決が本件約束手形の支払場所は受取人宅、即ち被上告人宅であること、被上

告人が同手形の満期に右手形を被上告人宅で所持していたことを確定した上、本件

手形は満期に適法に呈示されたとして、上告人は同手形の満期の翌日から遅延損害

金を支払う義務がある旨判示したのは正当である。所論は、右と異った見解に立っ

て原判決を非難するものであって、採用できない。

よって、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 長 部 謹 吾

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 斎 藤 朔 郎

裁判官 松 田 二 郎

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