大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和38(オ)621 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人大橋光雄、同粟田吉雄の上告理由第一部第一点について。

上告組合は法人であるから、その代表機関である組合長の知不知と組合の知不知

とは結局同一のことに帰着する。右の両者を別異のものと前提しての論旨は、それ

自体理由がない。

同第二点について。

原審において、被上告銀行は、上告組合の理事長Dの善意・悪意をとわず被上告

銀行に民法七一五条に基づく責任がない旨主張しているのであるから、この点につ

いて被上告銀行に擬制自白があつたものとする余地はない。論旨は採用できない。

同第三点、第四点について。

原審は、Eまたはその使者FとGとの間に本件融資あつ旋について具体的な打合

せが行なわれ、かつそれが実行された時は、すではGが被上告銀行Hの預金係長の

職を解かれた後であること、上告組合の組合長D持参の小切手および預金通帳の授

受の経過は、同支店の通常の預金業務とは外形上も著しく異るものであること(原

判決は、別に、EとFはもとよりであるが、Dも正常の預金をなすものでないこと

を知つていたことは否定できないと認定している。)からみて、Gの本件行為をも

つて同人が被上告銀行の職務の執行についてなしたものとは認めがたいと判示して

いる。右判示は、原判決認定の事実関係に照せば、正当として是認することができ

る。�

また、前記のように、本件Gの行為が被上告銀行の職務の執行についてなされた

ものでない以上、所論のGの共同不法行為ないし故意の責任に関して、かりに原判

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示に所論のような判断の不十分な点があつたとしても、結局において被上告銀行に

民法七一五条の責任がないとした原判決の結論に影響のないことは明らかである。

論旨は、いずれも採用できない。

同第五点について。

記録(とくに、論旨が指摘する上告組合提出主張の第六準備書面を含めて)によ

るも、上告組合の主張中被上告銀行が預金通帳用紙および印鑑等の保管上の注意を

怠つているとの主張は、民法七一五条第一項但書の監督上の注意義務違反があると

の意味で主張されているだけであり、また、原審に所論釈明義務があるとも認めら

れないから、論旨は採用できない。

同第二部第一点および第二点について。

原判決が確定した事実によると、上告組合を代理するEが直接またはその使者F

を介してGと所論契約をするについて、両当事者ともに真実に預金契約を締結する

意思がなく、単に預金の形式をととのえるために預金通帳が作成されたにすぎない

というのであるから、この場合には所論預金契約が成立しないとした原判示判断は

正当である。したがつて、所論表見代理が成立するいわれがなく、原判決に所論の

ような解釈の誤りも判断の遺脱もない。論旨引用の各判例は、本件と事案を異にし、

適切でない。論旨は採用できない。

同第三点について。

原判決の認定によると、Gは所論金員を預金として受領する意思を表示したこと

がなく、本件預金通帳は単に預金の形式をととのえるため授受されたにすぎず、と

くに、Gには上告組合を代理するEまたはその使者Fと通謀して預金を仮装して上

告組合の組合長Dを欺罔する意思は存しなかつたというのである。そうしてみれば、

Gが虚偽の意思表示をしたものと認める余地はなく、所論はその前提を欠くもので、

採用できない。また、所論指摘の大審院判例は、本件と事案を異にし、適切でない。

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よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 横 田 喜 三 郎

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 長 部 謹 吾

裁判官 松 田 二 郎

裁判官 岩 田 誠

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