大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和38(オ)638 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人深川実、同白井誠の上告理由第一点について。

いわゆる経営の委任または委託の場合、法律上委任の形式をとるにかかわらず受

任者が自己の計算において自己の裁量に従つて経営を行い、委任者に対して一定の

金員を支払うことが少なくない。かかる場合、経営の委任といつても実質は営業の

賃貸借に外ならないと解すべきである(このようなことはコンツエルン関係で屡々

その例を見るところである)。しかして原審の認定によれば上告人と訴外Dとの間

において経営委託契約の形式の下に、Dは上告人が被上告人より賃借する本件家屋

のうちの二坪余の店舗を使用し、同人自身の計算において鳥禽類の仕入販売を行い、

収益如何にかかわらず上告人に対して月額六〇〇〇円を下らざる金員を支払うこと

を約し、Dは該契約に基づいて右店舗を使用するものであるというのであつて、右

認定は挙示の証拠によつで肯認し得る。しからば上告人は経営委託契約の名の下に、

その賃借する本件家屋の一部をDに転貸したものと認むべきであり、これと同旨に

出でた原審の判断は正当であり、原判決には所論の違法はない。それ故論旨は採用

できない。

同第二、第三点について。

原審の適法に認定した事実関係の下においては上告人による右店舗の転貸が「背

信行為と認めるに足りない特段の事情」に該当しないとしまた被上告人のした本件

家屋賃貸借契約の解除および強制執行が権利濫用でないとした原審の判断は正当で

あり、原判決には何等所論の違法はない。それ故、論旨は採用できない。

上告代理人寺島祐一の上告理由第一、第二点について。

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原審の認定したところによれば、本件家屋に関する調停の転貸借禁止条項は、調

停成立当時、右家屋内の店舗を占有使用中の者は格別、それ以外の者に対し上告人

は被上告人の承諾なくして右店舗を転貸してはならない趣旨であり、しかもDは右

調停成立当時該家屋の店舗を占有使用していなかつたものであるにかかわらず、上

告人は被上告人の承諾を得ずして、その店舗をDに転貸したというのであり、右認

定は挙示の証拠によつて肯認でき、その判断の過程には所論の違法はない。所論は

畢竟、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実認定の非難に帰し、採用できない。

同第三点について。

所論の理由のないことは、上告代理人深川実、同白井誠の上告理由につき既に説

示したところであり、論旨は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 松 田 二 郎

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 長 部 謹 吾

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