大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和39(オ)1107 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人平井篤郎の上告理由一、三について。

偽造文書による登記申請は不適法であり(不動産登記法二六条、三五条一項五号)、

公法上の行為である登記申請行為自体に表見代理に関する民法の規定の適用はない

ものといわねばならない。しかしながら、偽造文書による登記申請が受理されて登

記を経由した場合に、その登記の記載が実体的法律関係に符合し、かつ、登記義務

者においてその登記を拒みうる特段の事情がなく、登記権利者において当該登記申

請が適法であると信ずるにつき正当の事由があるときは、登記義務者は右登記の無

効を主張することができないものと解するのが相当である(最高裁判所昭和三九年

(オ)第七七号昭和四一年一一月一八日第二小法廷判決)。

本件についてこれをみると、原判決(その引用する一審判決をふくむ。以下同じ。)

は、訴外Dが上告人の代理人として被上告人と締結した本件根抵当権設定契約、代

物弁済予約および連帯保証契約は民法一一二条、一一〇条に則り上告人にその効力

を及ぼし、上告人はDが上告人の代理人としてなした行為により被上告人に対しそ

の責に任ずべきものであり、右根抵当権設定契約及び代物弁済予約を原因とする本

件根抵当権設定登記及び代物弁済予約に基づく所有権移転請求権保全の仮登登記は

実体的法律関係に符合するものであり、本件各登記申請のために用いられた上告人

名義の委任状はDが上告人の意思に基づかずに作成したものであり、これに基づい

て本件各登記手続がとられたものではあるが、右登記の申請に当りそれが上告人の

意思に基づいていないことは被上告人の知らなかつたところでありその知らなかつ

たことについて正当の事由がある旨判断しているものと認めることができるし、原

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判決のこの判断は、その挙示する証拠及び詳細説示する事実関係から正当として是

認することができる。してみると、上告人は被上告人に対し、本件各登記の無効を

主張してその抹消を請求することはできないものといわなければならない。原判決

に所論の違法はなく、論旨は理由がない。

同二について。

Dに上告人の代理権があると信ずるについて、被上告人に過失があつたとは認め

られないとする所論摘示の原判決の判断は、その挙示する証拠及び事実関係に照ら

し是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は、原審の認定にそわ

ない事実を主張し、独自の見解に立つて、原判決を非難するものであつて、採用で

きない。よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、

主文のとおり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 長 部 謹 吾

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 松 田 二 郎

裁判官 岩 田 誠

裁判官 大 隅 健 一 郎

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