大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和39(オ)12 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人萩原潤三の上告理由第一点について。

原判決は、本件家屋二階部分の使用貸借については、被上告人主張のような、上

告人が被上告会社と関係がある間に限り、これを社宅として使用せしめる旨の合意

も、また上告人主張のような、上告人がその居住家屋を取り毀してその敷地に本件

家屋を建築せしめた代償として、上告人の終生住居として使用しうる旨の合意も、

ともに認められないとし、結局右使用貸借は、返還の時期又は使用及び収益の目的

を定めなかつたものとなるが、右家屋を建築するにあたつて上告人の住居を取り毀

した等、使用貸借が成立するに至るまでの原判決判示のような事情に照らすときは、

被上告会社において何時でも解約告知して目的家屋の明渡しを請求しうるとするの

は相当でなく、使用貸借が成立するに至るまでの経緯や、その後の利用状況その他

の諸事情に照らし、信義則上相当と認められる期間使用収益をなさしめた上でなけ

れば告知をなしえないとの前提に立つた上で、原審口頭弁論終結時においては、右

期間を経過しており、したがつて右最終弁論期日においてなされた告知により使用

貸借は消滅するに至つたものとした趣旨であることは、その判文上これを看取する

に難くない。

そして、被上告人は、上告人が被上告会社の取締役を解任され、被上告会社と関

係がなくなつたことに伴い、本件家屋を社宅として上告人に使用させておく事由が

なくなつたとして、昭和三二年一一月一〇日上告人に対し本件家屋の使用貸借につ

き解約告知の意思表示をなし、これを理由として右家屋の明渡しを求める本訴を提

起したが、その後も原審口頭弁論終結に至るまで本訴を維持して、使用貸借の存続

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を欲せず、目的家屋の明渡しを求める態度を上告人に対し表明し続けて来たもので

あることは、記録上明らかであり、かかる事情のもとにおいては、被上告人は、も

しさきの告知がいまだその時期にあらずとしてその効力を否定されるとすれば、あ

らためてその時期が到来したものとして解約告知をなす意思を、弁論の都度表示し

て来たものと解するのが相当である。このように、告知の時期を異にすることによ

つて、明渡請求権が別個の権利となるものでないことはいうまでもない。

されば、両当事者の主張にあらわれた事実を基礎として認められた本件使用貸借

成立に至るまでの経緯に照らし、前叙のように、被上告会社は相当の期間経過後で

なければ、告知権を行使し得ないものとしつつ、原審口頭弁論終結当時においては、

すでに右期間を経過したものとして、右最終弁論期日における告知を有効とした原

判決をもつて、所論のように、民訴法一八六条に違反し、当事者の申し立てざる事

項につき判決をなすの違法を犯したものといえないことはもとより、請求を理由あ

らしめる事実についても、弁論にあらわれない事実に基づいて判断することによっ

て、上告人の防禦権に不意打ちを加えたとの非難は当らず、弁論主義違反の違法は

認められない。論旨は理由がない。

同第二点および第三点について。

原判決は、前叙のように、本件使用貸借については、返還の時期又は使用および

収益の目的を定めたものとは認められないが、その成立の経緯等に照らし、信義則

上相当と認められる期間を経過した後でなければ解約の告知をなしえないとし、か

つ、その判示したような事実関係のもとにおいては、使用貸借の成立後九年近くを

経過した原審口頭弁論終結時には、被上告会社において解約告知して目的家屋の明

渡しを求めうべき時期が到来したと判断したものであつて、原判決の右認定判断は、

本件便用貸借の特殊性にも十分に意を用いた正当な認定判断として、これを肯認し

うる。右使用貸借成立に至るまでの経緯、特に上告人の強調する、本件家屋の敷地

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については上告人が借地権を有し、その地上にはもと上告人が住居として使用して

いた建物があったが、上告人はこれを何等の代償も得ることなく収去して、右土地

を被上告会社の利用に委ねた事実を重視しても、上告人が本件家屋に終生、あるい

は少くとも二、三〇年間以上居住しうるものと解しなければ経験則ないし条理に反

する、とはいえないし、原判決の前記判断に、所論のような民法五九七条の解釈適

用を誤つた違法があるものとも認められない。右使用貸借の終了による上告人の家

屋明渡義務と、敷地使用権原の消滅による被上告会社の家屋収去義務とが、同時に

履行されるべき関係に立たねばならないとする所論は、根拠のない独自の見解にす

ぎない。論旨はいずれも採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の

とおり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 岩 田 誠

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 長 部 謹 吾

裁判官 松 田 二 郎

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