最高裁判所第一小法廷 昭和40(さ)5 判決
主 文
原略式命令を破棄する。
本件公訴事案につき被告人を免訴する。
理 由
検事総長馬場義続の非常上告趣意について。
関係記録に徴すると、次のような事実が明らかである。被告人は「昭和三九年四
月二九日午後六時四〇分頃、兵庫県公安委員会が道路標識によつて一時停止すべき
場所と指定した神戸市須磨区a町b丁目b番地先道路において、軽四輪貨物自動車を
運転して交差点に入るに際し、一時停止しなかつたものである」という犯罪事実に
ついて、同年七月三一日神戸簡易裁判所に対し、公訴提起と同時に略式命令を請求
され、同裁判所は、即日右事実について、道路交通法違反として被告人を罰金二、
〇〇〇円に処する旨の略式命令をなし、右略式命令は、同年八月二二日確定した。
ところが、その確定後である同年一一月二七日、被告人は「昭和三九年四月二九日
午後六時四〇分頃、兵庫県公安委員会が道路標識によつて一時停止すべき場所と指
定した神戸市須磨区c町d丁目e番地先道路において、一時停止しないで軽四輪貨物
自動車(六兵え二〇二八号)を運転したものである」という犯罪事実について、神
戸簡易裁判所に対し、公訴提起と同時に略式命令を請求され、同裁判所は、同年一
二月四日右事実について、道路交通法違反として被告人を罰金二、〇〇〇円に処す
る旨の略式命令をなし、右略式命令は、同年一二月二九日確定した。
しかるに、以上二個の犯罪事実は、犯行の日時及び内容が全く同一であり、犯行
の場所も、右各確定事件の記録に徴すれば、その表示において異るだけで、全く同
一の場所であることが認められるので、結局、被告人は同一事実につき二重に処罰
されたものであることが明らかである。
したがつて、神戸簡易裁判所は、後の本件略式命令の請求については、既に確定
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裁判を経たものとして、刑訴法三三七条一号により免訴の判決をなすべきであつた
のである。されば、すでに確定裁判のあつた事実と同一事実について被告人に罰金
刑を科した同年一二月四日付本件略式命令は、法令に違反しかつ被告人のため不利
益であることが明らかである。
よつて、刑訴法四五八条一号により原略式命令を破棄し、同三三七条一号に従い
免訴の言渡をなすべきものとして、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
検察官 平出禾公判出席
昭和四〇年一一月一一日
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 長 部 謹 吾
裁判官 入 江 俊 郎
裁判官 松 田 二 郎
裁判官 岩 田 誠
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