大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和41(あ)2908 判決

主 文

原判決中被告人Aに関する部分を破棄する。

本件を広島高等裁判所に差し戻す。

理 由

弁護人平木一郎の上告趣意のうち、憲法三八条二項および三項違反をいう点は、

記録を調べても、所論被告人の供述の任意性を疑うべき証跡は認められず、また、

原判決の是認する第一審判決が、被告人の自白のみによつて被告人を有罪としたも

のでないことも判文上明らかであるから、その前提を欠き、その余は、事実誤認お

よび単なる法令違反の主張であつて、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由に当たら

ない。

しかしながら、職権をもつて調査するに、原判決には以下説明する理由により、

判決に影響を及ぼすべき法令違反があつて、これを破棄しなければ著しく正義に反

するものと認める。

原判決は、弁護人の事実誤認を主張する控訴趣意に対し、第一審判決が、その挙

示する証拠によつて、被告人に対し判示第二の(二)および(三)の各有印私文書

偽造、同行使の事実を認定したことを是認した。しかし、右判示第二の(二)の事

実について、第一審判決の挙示する証拠を検討すると、被告人が架空の溜池改修工

事等を名目にして、内容虚偽の年賦償還金連帯借用証書を作成し、これを判示の農

業協同組合に差し入れ、農林漁業金融公庫の農林漁業資金を借り受けようという意

思のあつたことおよびこのことをB、Cと共謀した事実は認められるけれども、右

借用証書に、借主としてほしいままにDおよびEの氏名を記入し、その名下に同人

等の印鑑を冒捺して、同人等名義の年賦償還金連帯借用証書を偽造し、これを行使

することについての認識ないし共謀があつた事実を認めるには十分でない。すなわ

ち、右第一審判示第二の(二)の有印私文書偽造、同行使の犯罪事実は、その挙示

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する証拠によつてこれを証明することができないのである。この点において、第一

審判決には、理由のくいちがいないし証拠の価値判断を誤つた違法があり、これを

是認した原判決には審理不尽の違法があるものといわなければならない。そして、

この違法は、判決に影響を及ぼすことが明らかであり、かつ、これを破棄しなけれ

ば著しく正義に反するものと認める。

よつて、刑訴法四一一条一号、四一三条本文により、裁判官全員一致の意見で主

文のとおり判決する。

検察官 菊池健一郎公判出席

昭和四二年九月七日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 大 隅 健 一 郎

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 長 部 謹 吾

裁判官 松 田 二 郎

裁判官 岩 田 誠

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