最高裁判所第一小法廷 昭和41(オ)172 判決
主 文
原判決を破棄する。
本件を福岡高等裁判所に差し戻す。
理 由
上告代理人木村一八郎の上告理由第一点および第三点について。
原判決の確定するところによれば、昭和三三年一二月二〇日、同二三日の両日に
亘り上告人と被上告人間でそれぞれ自己の所有名義となつていた判示不動産を相互
に贈与する旨の契約が成立したのであるが、本件贈与の対象となつた土地は、原判
決第二目録(8)を除き、同日まで上告人と被上告人とが共同して占有、管理、収
益していたものであり、右(8)は、同年一一月下旬頃従来の共同耕作をやめて判
示のように分割の上各自それぞれその割当部分を単独で耕作するようになつていた
というのである。このような場合は、特段の事情がないかぎり、すでに相手方の占
有している土地につき黙示的に民法一八二条二項による引渡をするのが通常である。
原判決の認定によれば、本件贈与につき、贈与に関する書面が作成されなかつたが、
それは、右契約が親族および部落有志約二〇名の立会の下で成立したものである関
係上、被上告人が、「これだけの人が一時に死ぬことはない。これだけの人がおれ
ば生証人であるから、証書は作成の必要がない。」といつたことによるのであり、
また、この際、被上告人は、「これで話がついて安心した。」といつて立会人の一
人であるDの手を握つたというのであるから、前記贈与契約成立の経緯に関する原
判決確定事実に照らしてみても、以上の事実関係の下において、被上告人において
前記民法一八二条二項による引渡を差し控えたとは思えない。原判決は、右引渡の
存在に関する前記の推認を妨げるべき特段の事情を確定することなくこの点の上告
人の主張を排斥したものであるから、経験法則に反する事実認定をなした違法があ
るものとして、破棄を免れない。本件は、なお右特段の事情の存否について審理判
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断する必要があるから、本件を原審福岡高等裁判所に差し戻すべきである。
よつて、その余の上告理由に対する判断を省略し、民訴法四〇七条により、裁判
官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 松 田 二 郎
裁判官 入 江 俊 郎
裁判官 長 部 謹 吾
裁判官 岩 田 誠
裁判官 大 隅 健 一 郎
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