大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和41(オ)511 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人森吉義旭の上告理由第一点について。

論旨は、原判決が、被上告人と訴外D工業株式会社との間の昭和三六年三月三一

日の契約について、それが単純なる資金の援助に関する契約であるにすぎない旨認

定した点には、甲第五号証等に照らして、審理不尽、理由不備の違法があると主張

する。しかし、原判決は、その理由説示において、被上告人が「同年(昭和三六年)

三月三一日訴外Dとの間でその事業資金の援助、製品の販売、原材料の供給等に関

する協定の大網を定めた覚書(甲第五号証)を作成し、同日右覚書に基づく資金援

助の具体的取り極め(甲第六号証)として、次のことを約定した。」として、被上

告人と右訴外会社との間の右契約が、事業資金の援助のみならず、製品の販売、原

材料の供給等にも関するものであり、その大網は甲第五号証のとおりである旨を認

定しているのであるから、論旨は、原判決を正解しないものであつて、採用するこ

とができない。

同第二点について。

論旨は、まず、被上告人が本件建物について根抵当権設定登記を経由したのは昭

和三六年六月一四日であり、また本件土地について所有権移転登記を経由したのは

同月二八日であるから、被上告人は、右各登記の当時には、上告人ら他の債権者を

害することを知つていたというべきであるのにかかわらず、右各登記の原因である

根抵当権設定契約および所有権の譲渡契約について詐害行為の成立を否定した原判

決には、審理不尽、理由不備、法律の解釈適用の誤り等の違法があると主張する。

しかし、原判決の適法に確定した事実によれば、被上告人は昭和三六年三月三一日

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訴外D工業株式会社との間に、その事業資金の援助等に関する契約を結び、主とし

てその融資による債権を担保するために、同日右建物について根抵当権設定契約を

締結し、また同年五月四日右訴外会社が訴外E建設株式会社から右土地を買い受け

た際、その代金はすべて被上告人が貸与した資金あるいは被上告人の立替により支

払われたので、その貸与および立替による債務等を担保するため、同日右土地の所

有権譲渡契約を締結したものであり、そして右各契約はいずれも上告人ら他の債権

者を害する行為とはいうことができないというのであるから、その後、それらの各

契約にもとづく義務の履行としてなされた右各登記の当時にいたり、被上告人が上

告人ら他の債権者を害することを知つたとしても、その事実はもはや右各契約の詐

害行為の成否について何らの影響を及ぼすものではないというべきである。したが

つて、原判決には、所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

なお、その余の論旨は、原審の適法にした事実の認定自体を非難するものにすぎ

ず、採用のかぎりでない。

同第三点について。

原判決が、その挙示の証拠関係により適法に認定した事実関係のもとにおいて、

被上告人と訴外D工業株式会社との間の本件建物についての根抵当権設定契約は、

被上告人が右訴外会社に対し営業復興のための資金の融通を約すると同時に、主と

して右融資による債権を担保するために締結されたものであつて、既存の債権につ

き被上告人のみに優先弁済を得させるために締結されたものではないのみならず、

右訴外会社が、その営業を継続し、好転させるために必要な資金の融通を被上告人

から受けるためには、やむをえないものであつたとして、右根抵当権設定契約につ

いて詐害行為の成立を否定した原審の判断は、正当として首肯することができる。

原判決の法律の解釈適用の誤り等をいう論旨は、原審の適法にした事実の認定を非

難するか、原審の認定にそわない事実を主張して原審の判断を非難するものにすぎ

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ず、採用することができない。なお、論旨の援用する各判例は、いずれも事案を異

にし、本件には適切でない。

同第四点および第五点について。

論旨は、原審口頭弁論の終結時において、本件土地の所有権が訴外D工業株式会

社に留保され、帰属していることを前提として、原判決の審理不尽、理由不備の違

法を主張するものと解されるが、しかし、原審は、右時点においては、右土地の所

有権が債権担保のために譲渡されて、被上告人に移転し、右訴外会社には帰属して

いないと認定しているのであるから、論旨は原審の認定しないことを前提とするも

のであり、採用することができない。なお、被上告人と右訴外会社との間の右土地

の譲渡担保が、仮に、所論のごとくいわゆる弱い譲渡担保であつたとしても、対外

的関係において、したがつて上告人に対する関係においては、右土地の所有権が被

上告人に移転しているものであることは明らかであるから、右譲渡担保がいわゆる

弱い譲渡担保であることを前提とする論旨も、その理由がない。

同第六点について。

原判決が、その挙示の証拠関係により適法に認定した事実関係のもとにおいて、

訴外D工業株式会社による本件土地の買入代金はすべて被上告人から貸与を受けた

資金あるいは被上告人の立替により支払われたものであるから、右貸与および立替

による債務等を担保するためになされた被上告人と右訴外会社との間の右土地の譲

渡担保をもつて、上告人ら他の債権者を害する行為とはいえないとした原審の判断

は、正当として是認することができる。原判決の解釈適用の誤りをいう論旨は、原

判文を曲解して、原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の

とおり判決する。

最高裁判所第一小法廷

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裁判長裁判官 岩 田 誠

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 長 部 謹 吾

裁判官 松 田 二 郎

裁判官 大 隅 健 一 郎

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