最高裁判所第一小法廷 昭和42(オ)210 判決
主 文
原判決を破棄する。
本件を広島高等裁判所に差し戻す。
理 由
上告代理人小野実の上告理由について。
みずからの不貞行為によつて婚姻関係の破綻を招いた配偶者が、その破綻を理由
として離婚の請求をすることが許されないことは、当裁判所の判例とするところで
ある(昭和二四年(オ)第一八七号、同二七年二月一九日第三小法廷判決、民集六
巻二号一一〇頁、同二九年(オ)第一一六号、同年一一月五日第二小法廷判決、民
集八巻一一号二〇二三頁、同二七年(オ)第一九六号、同二九年一二月一四日第三
小法廷判決、民集八巻一二号二一四三頁等)。
原判決(その引用する第一審判決を含む。)の確定するところによると、上告人
と被上告人とは、双方の両親の反対を押し切つて昭和二八年三月婚姻し、その後、
一女を挙げて、同三〇年四月ころまでは、いちおう親子三人の円満な生活を続けて
いたが、その前年末より被上告人の両親との同居が問題となり、上告人が、当初被
上告人の両親から冷遇されたこと等の事情から、その同居に不安をいだき、これを
拒んだため、被上告人は、同三〇年四月初めころ、上告人があくまでも両親との同
居を拒むのであれば離別も止むなしと考え、同月六日ころ上告人を長女とともにそ
の実家に帰したうえ、みずからは自己の両親の許に引き揚げて上告人あてに別離状
を送つたところ、上告人はこれに対し同月中ころ同居請求の調停を申し立て、被上
告人はさらに離婚請求の調停の申立てをする等したが、すべて不調に終つた。その
後、被上告人は、上告人母子を顧みぬまま、同年八月ころからはその両親宅におい
て訴外Dと情交関係に入り、翌三一年三月同女との間に一子を儲け、その後もさら
に二子を儲けて事実上の婚姻関係を継続したが、同四〇年七月Dが死亡したので、
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翌四一年五月さらに訴外Eと事実上の婚姻をして、現にこれと同棲中であるという
のである。
このように、被上告人が上告人との婚姻継続中右Dらと事実上の婚姻関係に入つ
たことは、もとより不貞の評価を免れず、それ以前すでに上告人との間の婚姻関係
が決定的に破綻していたとするのでないかぎり、これが現実に破綻するに至つた原
因は、被上告人のした前記重婚的内縁にあるものと認めるのが相当である。原審認
定の事実関係のもとにおいては、被上告人がDとの事実上の婚姻関係に入る前、す
でに上告人との間の婚姻関係が破綻していたものとすることはできず、原審もまた
その旨の認定をしたものではない。
してみれば、原審が被上告人の再度にわたる重婚的内縁を認めながら、これが上
告人との間の婚姻関係に及ぼした影響の有無に触れることなく、本件婚姻の破綻の
原因は主として双方の努力の欠如にあるとして、たやすく被上告人の本訴請求を認
容したのは、前記判例の趣旨に照らして、審理不尽、理由不備の違法があるものと
いわなければならない。論旨はこの点において理由があり、原判決は破棄を免れな
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よつて、民訴法四〇七条一項に従い、原判決を破棄したうえ、右の点につきさら
に審理を尽くさせるため本件を原審に差し戻すべきものとし、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 大 隅 健 一 郎
裁判官 入 江 俊 郎
裁判官 長 部 謹 吾
裁判官 松 田 二 郎
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