大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和42(オ)266 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人吉永多賀誠、同大崎康博の上告理由第一点、第二点について。

原判決(その訂正、引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の挙示する証拠に

よれば、Dが本件建物の売却につき、直接上告人本人より、または、少なくとも上

告人から復任権を認められていた訴外Eより、上告人(および訴外F)を代理する

権限を与えられ、したがつて右売買に伴う代金受領の権限をも与えられていた旨の

原審の判断は、正当として是認することができる。そして、原判決の判示するとこ

ろによれば、上告人の代理人たるDの番頭であるGに対し所論の金員が提供され、

同人においてこれを受領したというのである。それゆえ、原判決には所論の違法は

なく、論旨は採用することができない。

同第三点、第四点について。

Dが本件建物の売却、したがつて右売買に伴う代金の受領について上告人(およ

びF)を代理する権限を与えられていたことは、上告理由第一点、第二点について

説示したとおりである。それゆえ、本件においては商法五四四条による代理行為の

禁止を云為する余地がないとする原審の判断は、正当として是認することができる。

また、宅地建物取引業者であつても依頼者の代理人となることは妨げないものと解

すべきであり、原審はDを上告人の代理人と認定していることは明らかであるから、

原判決に所論の違法は認められない。所論判例違反の出張は、所論引用の判例が本

件と事案を異にするからその前提を欠き、理由がない。論旨は、要するに、原審の

認定しない事実を前提として原判決を攻撃するか、または、原審の専権に属する証

拠の取捨判断、事実の認定を非難するものであつて、採用することができない。

- 1 -

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の

とおり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 大 隅 健 一 郎

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 長 部 謹 吾

裁判官 松 田 二 郎

裁判官 岩 田 誠

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!