大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和54(さ)3 判決

主 文

原略式命令を破棄する。

本件公訴を棄却する。

理 由

記録によると、松戸簡易裁判所は、昭和五三年六月一六日公訴を提起されたAに

対する道路交通法違反被告事件について、同年七月一一日、「被告人は昭和五二年

七月二四日午前九時四五分ころ(原略式命令に午後九時四五分ころとあるのは、記

録に照らし明らかな誤記と認める。)、普通乗用自動車を運転して茨城県稲敷県a

村大字bc附近道路を通行区分に違反して道路右側部分を通行したものである。」

との事実を認定したうえ、道路交通法(昭和五三年法律第五三号による改正前のも

の)一七条三項、一一九条一項二号の二、刑法一八条、罰金等臨時措置法二条を適

用して、「被告人を罰金六〇〇〇円に処する。これを完納することができないとき

は金一〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。」旨の略式命令

を発付し、右略式命令は、昭和五三年八月二日確定したこと、ところが、これより

先の同年一月二一日に被告人は右と同一の事実に基き交通反則通告書により反則金

六〇〇〇円を納付すべき旨の通告を受け、その納付期限内である同年二月三日に右

反則金を納付していること、が認められる。

そうすると、右公訴事実については道路交通法一二八条二項により公訴提起が許

されないのであるから、公訴提起を受けた松戸簡易裁判所としては、刑訴法四六三

条一項に従い、事件を通常手続に移したうえ、同法三三八条四号により公訴棄却の

判決をすべきであつたにもかかわらず、右公訴事実につき有罪を認定して略式命令

を発付したものであつて、右略式命令は法令に違反しており、しかも被告人のため

に不利益であることが明らかであるといわなければならない。

よつて、刑訴法四五八条一号但書により、原略式命令を破棄し、同法三三八条四

- 1 -

号により本件公訴を棄却することとし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判

決する。

検察官平田胤明 公判出席

昭和五四年五月一〇日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 団 藤 重 光

裁判官 藤 崎 萬 里

裁判官 本 山 亨

裁判官 戸 田 弘

裁判官 中 村 治 朗

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!