最高裁判所第三小法廷 事件番号不詳 決定
右に対する所得税法違反被告事件について昭和二十九年四月十三日広島高等裁判所岡山支部の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人森末繁雄の上告趣意は、刑訴四百五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四百十一条を適用すべきものとは認められない。よつて同四百十四条三百八十六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判定する。
上告趣意書
被告人 中村逸雄
右の者に対する所得税法違反被告事件について上告趣意書を提出する。
第一点 原判決は、被告人に対し第一審同様に罰金十五万円に処したが右の刑は犯情に比し余りに重きに失するものである。
即ち被告人は第一審及び山根税務官に対し、本件犯罪事実を素直に全部認め何等隠す所なかつた。然しその脱税金額も原審判決までに全額弁償している。従て原判決言渡しまでには脱税額もなく、実に改しゆんの情顕著であつて依てこれに対して原判決が執行猶予の恩典を付与したことは当然であるがこれに併科して罰金十五万円を課した事は不当に重刑である。
即ち被告人に対する昭和二十八年四月十七日岡山地方検察庁における供述調書によれば「全部この通り相違ありません私が悪かつたのであり何にもかも申上げたのであり調べられた山根さんもあんたの様に正直に出た人はないから経費の面で多少疑問の分もあるがまあ経費を入れて総収益から落しておくと云われて経費も最大限に認めて貰つたのであります」と陳述してこれによつてみても取調官も改しゆんの情を充分認めているのであるからその点考慮し、罰金額を軽減せられるべきであつたに不拘原判決がその点逸脱した事は破棄を免れない。
昭和二十九年六月二十八日
右弁護人 森本繁雄
最高裁判所 御中